「ファイルをメールに添付して送り合っていて、どれのファイルが最新版かわからなくなる」「担当者のパソコンにしかデータがなく、その人が休むと業務が止まる」——中小企業の現場では、こうした悩みが今も珍しくありません。その解決策として真っ先に候補にあがるのが、クラウドストレージです。
ただ、いざ調べてみると、Google Drive・OneDrive・Dropboxと選択肢が並び、料金プランも複雑で、「結局うちはどれを選べばいいのか」と迷ってしまいます。
多くの中小企業にとって、実質的な選択肢はGoogle WorkspaceかMicrosoft 365のどちらかです。そして、その選択は「すでに何を使っているか?」でほぼ決まります。Dropboxは、社外との大容量ファイルのやり取りが多い会社に向いた特化型の選択肢と捉えてください。
この記事では、そうなる理由と、3つのサービスの違いを、中小企業の実務目線でお伝えします。
なお本記事は「どれを契約するか選択する」ための比較記事です。OneDriveへの具体的な移行手順や、共有フォルダの権限設計は別記事で扱います。
クラウドストレージを会社で使うということ
個人でGoogleドライブやOneDriveを使ったことのある方は多いと思いますが、会社で使う場合は、あらかじめ押さえておきたいポイントがいくつかあります。
個人向けと法人向けは何が違うのか?
同じクラウドストレージも個人向けと法人向けでは求められるものが異なります。
無料や個人向けのプランでも、ファイルの保存や共有はできます。ですが、会社で使うとなると以下のような点が重要になります。
- 独自ドメインのメールアドレスで運用できること
- 管理者が全員のアカウントやアクセス権を一元管理できること
- 退職者が出たときにその人のデータやアカウントをきちんと引き継げること
個人向けプランには、こうした管理機能がありません。つまり、会社で使うなら「法人向けプラン」が前提となります。この記事でも、法人向けを前提としてクラウドストレージを比較していきます。
「共有ドライブ」という発想
もう1つ知っておいていただきたいのが、ファイルを「個人」ではなく「会社」に紐づけるという考え方です。
たとえばGoogle Workspaceの「共有ドライブ」では、ファイルの所有者が個人ではなく組織になります。そのため、作成した社員が退職しても、ファイルが消えたり引き継げなくなったりしません。属人化やデータの持ち去りを防ぐうえで、これは大きな意味を持ちます。
以下の記事では、Googleドライブを例にマイドライブと共有ドライブの違いを解説しています。
クラウドストレージの選び方のポイント
3つのサービスを比較する前に、「クラウドストレージはどこで差がつくのか?」を先に整理しておきましょう。
容量と料金の考え方
料金は「1ユーザーあたり月額いくら」であらわされますが、容量の数え方はサービスによって違います。1人ずつに固定容量が割り当てられるものもあれば、組織全体でまとめて共有する「プール方式」もあります。
たとえばGoogle WorkspaceではStandard以上のプランがプール方式で、組織全体で容量を分け合えます。実質的に使える容量はこの数え方で大きく変わってきます。
既存の環境との相性
これが中小企業にとって最も現実的な判断軸です。
WordやExcelのデスクトップ版を日常的に使っているなら、それらのアプリと一緒にOneDiveも提供されるMicrosoft 365を選ぶのが自然な選択です。逆に、すでにGmailを使っている、あるいはスプレッドシートやドキュメントで十分という会社なら、Google Workspaceに含まれるGoogle Driveが素直な選択になります。
「ストレージ単体」で選ぶよりも、「普段使っているツール」から考えて選択するほうが、結果的に失敗することは少ないでしょう。
セキュリティと管理のしやすさ
会社でクラウドストレージを使ううえで、地味ながら最も差が出るのがこの部分です。
まず見ておきたいのは、アクセス権限をどこまで細かく設定できるかです。フォルダやファイルごとに「閲覧だけ」「編集もできる」「社外への共有は不可」といった具合に権限を分けられると、見せたくない情報が意図せず広まるのを防げます。
次に確認したいのが、操作の履歴が残るかどうかです。誰がいつどのファイルを開き、ダウンロードし、共有したのかが記録されていれば、万一情報が漏れたときにも経路をたどれます。あわせて、パソコンを紛失したときに管理者が遠隔でアクセスを遮断できるかも、確認しておきたいポイントです。
サポート体制
ITに専任の担当者がいない会社ほど、実は最後に効いてくるのがサポート体制です。
ファイルの同期がうまくいかない、急にアクセスできなくなった、社員がアカウントにログインできない——こうしたトラブルは、たいてい業務の真っ最中に突然起こります。そのときに、日本語で相談できる窓口があるかどうかで、復旧までの安心感がまるで違ってきます。
Google WorkspaceもMicrosoft 365も、メーカーと直接契約するほかに、国内の販売パートナーを通して契約する方法があります。パートナー経由だと、導入時の初期設定から、他社サービスからの移行まで日本語で伴走してもらえることが多く、社内にITに詳しい人がいない会社にとっては心強い味方になります。

Google Workspace(Googleドライブ)
まずは、コストと使いやすさのバランスで多くの中小企業に選ばれているGoogle Workspaceから見ていきます。
特徴と強み
Google Workspaceの一番の特徴は、ブラウザだけで作業が完結することです。専用ソフトのインストールが要らず、パソコンでもスマートフォンでも同じように使え、動作も軽快です。スプレッドシートやドキュメントは複数人が同時に開いて編集できるため、「最新版をメールで送り直す」というやり取りそのものがなくなります。
前述の共有ドライブに加え、Googleならではの強力な検索でファイルをすぐ探し出せる点も、日々の業務では地味に効いてきます。さらに、AIアシスタントのGeminiが全プランに標準で組み込まれており、メールの下書きや資料の要約、表計算の集計などをその場で手伝ってくれます。
Gmailやカレンダー、ビデオ会議のMeetといったツールも一式そろっているため、これひとつで社内のやり取りをまとめやすいのも魅力です。
料金とプラン
Google Workspaceには、中小企業向けに主に3つのプランがあります。Business Starterが月額800円で容量は30GB、Business Standardが1,600円で2TB、Business Plusが2,500円で5TBです(いずれも1ユーザーあたり・年間契約・税別)。
どのプランでもGmail・ドライブ・Meet・カレンダーといった主要ツールは使え、AIアシスタントのGeminiも全プランに標準搭載されています。会社でファイルを共有する要となる「共有ドライブ」は、Standard以上のプランで使えます。

注意点
最小構成のStarterは容量が30GBと少なめで、ファイルが増えると早めに壁に当たります。写真やPDFを多く扱う会社は、はじめからStandardへのアップグレードを見込んでおくのが無難です。また、Google Workspaceは過去にも価格改定を重ねており、今後も改定が予定されています。導入を検討する際は最新の料金を必ずご確認ください。
Microsoft 365(OneDrive)
次に紹介するのはWordやExcelを使う会社にとって外せない選択肢であるMicrosoft 365です。
特徴と強み
Microsoft 365の最大の強みは、多くの会社が使い慣れたWord・Excel・PowerPointのデスクトップ版と一体で使えることです。これまで作ってきたExcelファイルのレイアウトや関数、マクロがそのまま動くため、既存の資産を活かしたまま移行できます。インターネットにつながっていない場所でも作業できる点も、Google WorkspaceのようなWeb中心のサービスとの違いです。
ファイルの保存はOneDriveが担い、部門やチームでの共有はSharePointが受け持つという役割分担になっています。WordやExcelのファイルも、ブラウザ上で複数人が同時に編集できます。
また、AIアシスタントのCopilotが上位プランに統合されつつあり、使い慣れたアプリの中で文書作成やデータ分析の支援を受けられるようになってきました。Windowsパソコンとの相性がよく、法人での利用実績が豊富な点も、安心して選べる材料になります。
料金とプラン
Microsoft 365にも複数の法人向けプランがあります。
Business BasicはデスクトップのOfficeアプリが付かずWeb版のみで、OneDriveの容量は1TB。Business StandardからWord・Excel・PowerPointのデスクトップ版が付き、Business Premiumではさらにセキュリティや端末管理の機能が加わります。
OneDriveの標準容量は1ユーザーあたり1TBで、条件により最大5TBまで拡張できます。

注意点
Microsoft 365は2026年7月に商用ライセンスの価格改定があり、Business BasicとStandardは値上げ、Business Premiumは据え置きとなりました。この結果、セキュリティを重視する会社では、単純にStandardを更新するより、機能が手厚く価格が据え置かれたPremiumへ寄せたほうが割安になる場合があります。
改定後の正確な金額は、契約前に公式サイトでご確認ください。
Dropbox
最後に、ファイル共有ツールとして根強い人気のあるDropboxを紹介します。
特徴と強み
Dropboxの一番の特徴は、ファイル同期の速さと安定性です。大容量のファイルでも取りこぼしなく同期できる信頼性は、長年の実績に裏打ちされています。中でも「Dropbox Transfer」を使えば、動画や設計データのような重いファイルをリンクひとつで送れます。
操作画面がシンプルで直感的なため、ITに詳しくない取引先とも、つまずかずにファイルをやり取りできるのも利点です。誤って削除・上書きしたファイルを戻せるバージョン履歴や、さまざまな形式のファイルをブラウザ上でそのままプレビューできる機能も備わっています。WindowsとMacが混在する環境でも同じように使えるため、社外との協業が多い会社には心強い存在です。
料金とプラン
Dropboxは、法人・チーム向けのプランがユーザー単位の料金体系になっています。従来のBusiness・Business Plusは2025年5月末で新規販売が終了し、現在はStandardやAdvancedが中心です。誤って削除・上書きしても戻せるバージョン履歴の保存期間は、プランによって異なります。

注意点
GoogleやMicrosoftに比べると、1ユーザーあたりの料金は割高になりやすい傾向があります。また、個人向けプランと法人向けプランは料金の考え方が異なるため、混同しないようにしましょう。
純粋に「社内でファイルを共有・保存したい」だけなら、GoogleかMicrosoftのほうがコスト面で有利なことが多いです。
3つのサービスを一覧で比較する
ここまでの内容を表にまとめると以下のようになります。
| 項目 | Google Workspace | Microsoft 365 | Dropbox |
|---|---|---|---|
| 代表的な入門プラン | Business Starter(30GB) | Business Basic(OneDrive 1TB) | Standard(チーム向け) |
| 月額の目安 (入門プラン・一人あたり・年払い) | 800円 | 899円 | 1500円 |
| 主要容量 | 2TB〜5TB(Standard以上・プール) | 1TB〜最大5TB | 2TB |
| 共有の考え方 | 共有ドライブが強力 | OneDrive+SharePoint | フォルダ共有・リンク共有 |
| 長所 | コストと使いやすさ | Officeとの一体運用 | 大容量の受け渡し・同期速度 |
タイプ別のおすすめ
最後に、会社のタイプ別に、どのクラウドストレージを選べばよいかを提案します。
Gmail中心・コスト重視 ⇨ Google Workspace
すでにGmailを使っている、あるいはこれから独自ドメインのメールとファイル共有を最小コストで整えたい会社は、Google Workspaceが最適な選択です。共有ドライブを利用できるStandardプランを基準にしてプランを選びましょう。
Office中心・Teams利用 ⇨ Microsoft 365
WordやExcelのデスクトップ版が業務の中心でTeamsも使っている会社は、Microsoft 365でまとめるのが自然な選択です。メールも会議も会社の業務全体を一本で運用できます。
社外との大容量共有が多い ⇨ Dropbox
重いファイルを社外と頻繁にやり取りするならば、Dropboxの同期の速さと受け渡しのしやすさが効いてきます。
バックアップまで考えるならNASの併用も考える
クラウドは日々の共有には便利ですが、「万一に備えてデータを守る」という観点では、事務所内のNAS(ネットワーク接続型のストレージ)と併用するのも有効です。クラウドと手元のハードウェア、両方にコピーを持つことで、より堅牢なファイル管理環境を築くことができます。
まとめ
中小企業のクラウドストレージ選びは、一番高機能なものを選ぶのではなく、「どれが今使っている環境に合うか?」で決めるのが失敗しないコツです。要点を振り返りましょう。
なお当社では、クラウドストレージの選定や、既存のファイル共有からの移行、社内の権限設計まで含めたIT環境の整備についてもご相談を承っています。「どれを選ぶか」だけでなく「どう定着させるか」でお困りの際は、あわせてご検討ください。



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