IT担当がいない会社が、まず整えるべき5つのこと|情シス不在の守りの基本

「うちにはIT担当者がいないので、パソコンやクラウドサービスの管理はなんとなく後回しになっている」——こうしたお話を、中小企業の経営者や事務担当の方からよく耳にします。専任の担当者がいないこと自体は、規模を考えれば自然なことです。従業員30人以下の会社で情シス専任を一人置くほどの仕事量はない、というのが実情でしょう。

問題なのは担当者を置かないこと自体ではなく、全体を把握する人間がいないまま日々が過ぎ、トラブルが起きて初めて慌てる状態になってしまうことです。社内にITの専任者がいない状態は「ゼロ情シス」とも呼ばれ、パソコンやクラウドサービスが増えるほど、全体の把握できていないことのリスクは積み上がっていきます。

この記事では、IT担当がいない会社でも「これだけは押さえておきたい」という最低ラインの土台を、着手しやすい順番でご紹介します。ここでは全体像と優先順位をつかんでいただくことを目的にしています。読み終えたときに、御社が「何から手をつければいいか」が見えている状態を目指します。

なお、社内にIT担当が一人でもいる、あるいは総務や経理の方が兼務で回しているという場合は、以下の記事を参考にしてください。

目次

情シスがいない会社で起きがちなこと

まずは情シスがいない会社で「何が起きうるのか?」を軽く押さえておきましょう。

全体を把握している人がいない

どのパソコンを誰が使い、どのサービスに何のアカウントで入っているのか。こういった基本情報が誰の頭の中にない、あるいは担当者ごとにバラバラに散らばっている会社は少なくありません。全体を把握している人が一人いないと、同じようなサービスを二重に契約していたり、退職した社員が申し込んだまま誰も使っていない有料サービスに支払いを続けていたりしても、誰も気づくことができません

不要なサービスの洗い出しについては、費用の見直しという切り口でも別の記事で詳しくまとめています。まずは今使っている業務ソフトの棚卸しから始めたい方は、以下をご覧ください。

何かが起きて初めて気づく

情シス不在の会社では、パソコンの故障、担当者の退職、ウイルス感染といった出来事が起きて初めて、「そういえば何も備えていなかった…」と気づくことがほとんどです。事前に手を打っておけば数時間で済む作業が、備えがないために復旧に数日かかる、最悪なケースでは業務停止につながります

退職した社員のパソコンにしか入っていないデータがあった、共有アカウントのパスワードを知っていたのがその人だけだった、というのはよくある話です。平常時に最低ラインのチェックだけでもクリアしておくと、こうした「その人がいないと分からない」という事態を防げます。

まず押さえておきたいIT管理の土台

ここからが本題です。まずはIT管理の基本を「持ち物の把握」「アカウント」「バックアップ」「セキュリティ」の4つの観点で見直しましょう。すべての項目を完璧にチェックする必要はありません、まずは一通り確認することが大切です。

何を持っているかを把握する

最初の一歩は、会社が持っているものを一覧にすることです。パソコンやスマートフォンなどの機器、契約中のクラウドサービス、それぞれの社員のアカウント。これらを一枚の台帳にまとめておくと、故障時の対応も退職時の手続きも一気にやりやすくなります。

まずは表計算ソフトの一覧で十分です。項目が固まってきたら、より本格的な管理へ広げていく形で構いません。下は、当社が使っている一覧表の記入例です。

下は、当社がお手伝いするときに使っている記入例です。項目の性質が違うので、機器と、クラウドサービス・ソフト契約の二枚に分けておくと管理しやすくなります。

機器(パソコン・スマホ・周辺機器)一覧の記入例

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管理番号種類メーカー・型番主な使用者導入時期保証・リース期限備考
PC-01ノートPC富士通 LIFEBOOK総務・田中2023/042026/03(リース)Microsoft 365 利用
PC-02ノートPCDell Inspiron営業・佐藤2022/092025/09(保証切れ)動作が重く買い替え検討
PC-03デスクトップHP ProDesk経理・鈴木2021/06会計ソフト専用
PH-01スマートフォンiPhone SE営業・佐藤2023/072025/07会社契約回線
NW-01ルーターNEC Aterm事務所共用2022/01Wi-Fi親機・設定者不明
PR-01複合機ブラザー MFC事務所共用2020/112025/11(リース)FAX兼用
NAS-01NASSynology DS220j全社共有2024/02共有フォルダ・バックアップ用

クラウドサービス・ソフト契約一覧の記入例

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サービス名主な用途契約プラン利用人数月額(税抜)契約更新日管理者備考
Microsoft 365メール・OfficeBusiness Standard15約28,000円2026/04田中年払い
Google Workspaceファイル共有(試験)Business Starter3約2,600円2025/10田中M365と用途が重複・要整理
freee会計会計・請求スタンダード2約5,000円2026/01鈴木経理のみ利用
ウイルス対策ソフトウイルス対策法人向け(15台)15台約6,000円2025/12更新担当が決まっていない
Chatwork社内連絡ビジネス15約6,000円2026/03佐藤
○○勤怠勤怠管理15約4,500円2025/09田中
旧オンラインストレージファイル共有5約3,000円2025/08不明使用者不明・解約を検討

アカウントとパスワードを管理する

次にアカウントとパスワードの管理です。付箋やメモ帳に書いて貼っている、あるいは全員で同じパスワードを使い回している、という状態は、退職者が出たときや不正アクセスの際に大きなリスクになります。

まずは「誰が・どのサービスに・どんな権限で入っているか」を把握し、共有アカウントを減らすところから始めましょう。

バックアップと故障・災害への備えを用意する

3つ目は、大事なデータが消えないようにする備えです。パソコンの故障、うっかりの削除、そして近年増えているランサムウェア。どれも、バックアップさえあれば被害を最小限にできます。

保存先の選び方は、事務所に置くNASという選択肢を軸に整理しています。あわせて、事業を止めないための考え方まで押さえておくと安心です。

セキュリティの最低ラインを引く

最後にセキュリティです。高価な仕組みを入れる前に、まずは基本的な守りを揃えることが大切です。クラウドサービスを安全に使うための基本と、社員をだましのメールから守る訓練は、専任者がいなくても始められます。

特に、取引先や顧客の情報を預かる士業やクリニックでは、「守っていること」を説明できる状態そのものが信頼につながります。

詳しい人の不在の補い方

土台が見えてきたら、それを「誰がどう回すか」を決めていきます。専任者を雇わなくても、役割を仮に決めておくことと、苦手な領域を外に頼ることで、無理なく続けられる体制になります。

社内で担当と役割を仮でも決める

たとえ兼務であっても、「この領域はこの人が窓口」と決めておくだけで、対応の抜け漏れは大きく減ります。誰が手を動かし、誰が判断するのかを軽く整理しておきましょう。

ポイントは、判断まで一人に背負わせないことです。費用が発生する契約や、セキュリティに関わる決めごとは経営者や上長が判断し、日々の作業だけを担当者に任せる、という切り分けにしておくと、担当者の負担が重くなりすぎません

兼務での役割分担や、どこまでを自社で持つべきかの設計は、以下の記事で詳しく扱っています。

わからない領域は外部に頼る

セキュリティやサーバーまわりなど、専門性が高く、間違えると被害が大きい領域は、無理に自社で抱え込まず外部に頼るのが現実的です。こうした業務は頻度こそ低いものの、いざというときに判断を誤るとダメージが大きいため、外に出す価値が高い領域です。

外部委託には、困ったときだけ相談するスポット契約から、日常の運用をまるごと任せる運用代行までいくつかの形があります。運用代行(情シス代行)の費用は、ヘルプデスク中心の軽いサポートなら月3〜10万円ほどから、資産管理やセキュリティ運用まで含めると月10〜30万円程度が目安です。正社員のIT担当を採用する場合と比べ、必要な範囲だけを頼めるのが利点です。

AI・AIエージェントに業務を任せて人手不足を補う

専任のIT担当がいない会社ほど、AIやAIエージェントの恩恵は大きくなります。人を増やさずに、これまで手が回らなかった業務の一部を肩代わりしてもらえるからです。ここでは、担当者がいない状況を補う代表的な使い方をご紹介します。

社内マニュアルや規程をAIに答えさせる

「パスワードの初期設定はどうするのか」「経費精算のやり方は」といった社内からの質問は、担当がいないと誰も答えられず、その都度調べる手間が発生します。社内のマニュアルや規程をAIに読み込ませておけば、聞けば答えてくれる状態をつくれます。問い合わせそのものを減らす仕組みづくりとあわせて検討すると効果的です。

繰り返す定型作業を自動化する

毎月のデータ集計、決まった手順のファイル整理、定型的な連絡といった繰り返し作業は、自動化の得意分野です。すでにMicrosoft 365やGoogle Workspaceを契約している会社なら、追加費用なしで使えるノーコードの自動化ツールから始めるのが手軽です。

任せる前に業務を整える順番を守る

台帳や手順が曖昧なまま、AIに指示を出してもうまく動きません。まずは前の章で触れた「持ち物の把握」や「手順の記録」を整えたうえで、任せられる業務から試してみるのが失敗しない順番です。

AIを使うこと自体が初めてなら以下の入門記事を読むことをおすすめします。

土台が整い、任せる範囲が見えてきたら、自社専用のAIエージェントに業務を任せるという選択肢も現実的になります。当社でも、担当者がいない会社向けに、業務に合わせたAIエージェントの構築と導入後の伴走をお手伝いしています。

まとめ

情シス担当がいなくても、「持ち物の把握・アカウント・バックアップ・セキュリティ」の4つを一通り確認するだけで、会社の守りは確実に変わります。すべてを一度に完璧にする必要はありません。まずは台帳づくりの一歩から始めて、手が回らない領域は外部の力を借りたり、AIに定型業務を任せたりしながら、少しずつ整えていきましょう。

当社では、こうしたIT管理の土台づくりから、担当者がいない会社向けの運用サポート、業務に合わせたAIエージェントの構築まで、伴走しながらお手伝いしています。「何から手をつければいいか分からない」という段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

1981年生まれ、名古屋出身。

2008年よりドイツ・ベルリンに在住。
ドイツの国家資格である職業訓練プログラム「アプリケーション開発専門IT技術者」を修了後、医療系自社開発企業にてデスクトップ・Webアプリケーションの開発に4年間従事。
2022年よりドイツの大手SIer「Adesso SE」にて、フルスタックエンジニアとしてリードポジションを務める。

2027年に日本へ帰国し、日本の中小企業へのAI導入支援を本格的に開始予定。

著書「AI時代の海外移住戦略

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