建築見積ソフト比較|工務店の原価・請求・支払まで管理できる6製品

工務店の経営で避けたいのは、見積りの時点では利益が出るはずだった工事が、終わってみると赤字になっていたというずれです。

見積書・発注書・請求書がExcelや紙に分かれていると、工事の途中で原価がどこまで膨らんでいるかを追いきれず、気づいたときには手遅れになりがちです。

帝国データバンクが2026年1月に発表した調査では、2025年の建設業の倒産は2,021件で、12年ぶりに2,000件を超えました。人件費や建材価格の上昇に請負単価の転嫁が追いついていないことが背景にあり、売上を伸ばしながらも手元資金が足りず、運転資金をまかなえなかった例も確認されています。

さらに2025年12月12日には改正建設業法が完全施行され、見積書に材料費や労務費の内訳を示すことが求められるようになりました。見積りの段階で原価を細かく押さえ、工事中の外注費や支払まで追えるかどうかが、利益を守るうえで大切になっています。

この記事では、工務店の見積書管理から原価・請求・支払までを一つにまとめられる建築見積ソフト(見積管理システム)6製品を、料金・提供形態・管理できる範囲で比べます。料金・仕様は2026年9月時点の公式情報です。

この記事で分かること
  • 規模と管理したい範囲で選ぶ建築見積ソフト6製品
  • 見積特化型と一元管理型、クラウド型とインストール型の違い
  • 改正建設業法やインボイス制度への対応の確認点
  • 会計ソフト・電子契約との組み合わせ方

目次

結論:規模と管理したい範囲で選ぶ

先に結論をまとめます。自社の状況に近い行から、候補を選んでください。

自社の状況候補選ぶ理由
見積りから請求・アフターまでを一本のシステムにまとめたいAnyONE工務店向けの業務を一通り扱い、導入企業は4,300社超。エクセルのような操作感
クラウドで現場とつなぎ、料金を見てから決めたいアイピアブラウザで使うクラウド型で、プランごとの料金を公開している
少人数の会社で、まず費用を抑えて試したいサクミル月額9,800円から(税抜)で20アカウントまで含み、2か月の無料トライアルがある
自社独自の業務の流れに合わせたい建て役者1社ごとにシステムを作り込む考え方の製品
原価・労務費・外注費の支払を中心に管理したいKAKUSAスマホ日報から労務費を集計し、外注先への支払予定まで管理できる
施工管理にANDPADを使っている、または元請が使っているANDPAD 引合粗利管理施工管理と同じ基盤で、引合から完工までの粗利を追える

どの製品も、使える機能と料金はプランによって変わります。候補を二つか三つに絞ったら、無料トライアルやデモで自社の見積書を一件作ってみると、操作の相性が分かります。

久野

機能の多さで選ぶと、使わない機能ばかりで現場に定着しないことがあります。候補を絞ったら、自社の見積書を一件作って操作の相性を確かめてください。


工務店向けの建築見積ソフトとは?

工務店向けの建築見積ソフト(見積管理システム)は、見積書の作成と保管だけでなく、見積りをもとにした実行予算・発注・原価・請求・入金、外注費の支払までを、案件ごとにつなげて管理するソフトです。

Excelでも見積書は作れますが、案件が増えるとファイルが分かれてしまい、見積りと実際にかかった原価を突き合わせる作業に時間がかかります。

建築向けならではの機能

建築向けの見積管理システムには、一般的な見積書作成ソフトにはない次のような機能があります。

  • 階層見積
    工事・工種・部材の順に、明細を階層に分けて組み立てる
  • 過去の見積りの再利用
    似た工事の見積りを呼び出し、手直しして使う
  • 単価マスタ
    材料や工種ごとの単価を登録しておき、見積りのたびに探さずに済ませる
  • 実行予算との連動
    見積りから実行予算と発注を作り、原価と粗利を工事の途中で確かめる

扱う範囲による型の違い

製品は、どこまでの業務を扱うかで大きく三つの型に分かれます。この記事で紹介する製品を型ごとに並べると、次のとおりです。

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型扱う範囲向いている会社この記事の製品
一元管理型(ERP型)顧客管理から見積り・原価・請求・アフターまで部門や担当をまたいで情報を共有したい会社AnyONE、アイピア、サクミル、建て役者
原価管理型見積り・実行予算・原価・支払が中心お金の管理を先に整えたい会社KAKUSA
施工管理+経営管理型写真・図面・工程の共有に、粗利の管理を足す現場の情報共有をすでに進めている会社ANDPAD 引合粗利管理

見積書の作成だけに絞ったソフトもありますが、この記事では、原価や支払まで一つにまとめられる製品を取り上げます。


建築見積ソフトを選ぶときに確認したいポイント

比較記事を読むと、機能が多いソフトほど良いものに見えがちです。ただ、実際には自社で使わない機能が多いソフトほど現場に定着せず、結局Excelに戻ることもあります。まず、次の表で自社にとって大切な点を整理しておきましょう。

確認すること見るポイント
管理する範囲見積りだけか、原価・請求・支払まで一つにまとめたいか
提供形態クラウド型か、パソコンにインストールする型か。スマホから入力できるか
規模と料金使う人数に合うか。アカウントの上限と、超えたときの料金
法改正・制度への対応材料費・労務費を分けた見積書、インボイス制度の請求書、電子取引データの保存
他のソフトとの連携会計ソフト・電子契約とつなげられるか、CSVで出力できるか
操作性とサポート現場の職人や事務担当者が使えるか。導入時の講習の範囲と費用

見積特化型と一元管理型

最初に確認したいのは、見積書の作成だけを効率化したいのか、顧客管理から見積り・原価・請求・アフターまでを一つのシステムに集めたいのかという点です。

ERP型(業務システムを一本に統合する基幹システム)と呼ばれる一元管理型のソフトは、初期の設定や移行に手間がかかります。その代わり、運用に乗れば情報が一か所に集まり、特定の担当者しか分からない業務を減らせます。

クラウド型とインストール型

次に、ブラウザで使うクラウド型か、パソコンにインストールして使う型かを確かめます。

現場でスマホやタブレットから確認・入力したいならクラウド型が向いており、インストール型は複数の拠点でデータを共有したり、外出先から見たりする使い方には工夫が要ります。ただし、インストール型でもインターネット経由でデータを共有し、スマホアプリを用意している製品があります。提供形態だけで決めずに、現場で何を入力したいかから確かめるのが確実です。

自社の規模との相性

製品によって、合う会社の規模も異なります。当社の目安は次のとおりです。

規模適した製品タイプ
1〜5名(一人親方含む)低価格クラウド型・無料プラン中心
5〜20名オールインワン型クラウドSaaS
20〜50名カスタマイズ可能なERP型
50名以上中堅向け基幹システム

ソフトが想定する規模から外れると、機能が足りないか、使わない機能ばかりで費用がかさむかのどちらかになりやすいため、この表を目安に候補を絞ってください。

建設現場でタブレットの画面を見ながら打ち合わせをする作業員

改正建設業法の見積書への対応

2025年12月12日に完全施行された改正建設業法では、建設業者は工事の種別ごとの材料費・労務費と、法定福利費などの必要な経費の内訳、工程ごとの作業に必要な日数を記載した見積書(材料費等記載見積書)を作るよう努めることとされました。

作成そのものは努力義務ですが、通常必要な額を著しく下回る材料費等で見積もることや、注文者がそうした変更を求めることは禁止されました。原価割れの契約や、著しく短い工期での契約も禁止されています。

国土交通省の「労務費に関する基準」の運用方針では、当初と最終の見積書を、工事の目的物の引渡しから10年間保存するよう示されています。労務費のダンピングがないかを建設Gメンや許可行政庁が確認する際に、保存した見積書が使われるためです。

見積管理システムを選ぶときは、労務費などの内訳を分けた見積書を無理なく作れるか、過去の見積書を検索して取り出せるかを確かめておきましょう。

インボイス制度と電子保存への対応

請求書と書類の保存にも、確認したい制度があります。

2023年10月1日に始まったインボイス制度では、適格請求書に登録番号や税率ごとの消費税額などを記載する必要があります。また電子帳簿保存法では、2024年1月以降、メールなど電子で受け取った請求書や見積書を、電子データのまま保存することが求められています。

紹介する製品のうち、アイピアとKAKUSAは、公式サイトでインボイス対応の請求書を案内しています。ほかの製品は公式ページで記載を確認できなかったので、導入前に問い合わせてください。

電子で受け取った書類の置き場所は、電子取引データの保存先を決めるで整理しています。


工務店におすすめの建築見積ソフト

ここからは、当社が中小工務店の経営者・事務担当者向けに選んだ6製品を紹介します。まず、料金と提供形態を一覧で比べます。

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製品月額の目安初期費用お試し提供形態主な範囲
AnyONE要問い合わせ要相談公式に記載なしWindowsパソコンのアプリ+スマホアプリ顧客・見積り・実行予算・発注・入出金・アフター
アイピア10,000円〜(ライト、5ユーザーまで)120,000円(ライト)デモ体験クラウド顧客・見積り・発注・原価・入金・支払・工程・写真
サクミル9,800円〜(20アカウントまで)0円2か月の無料トライアルクラウド案件・見積り・実行予算・原価・請求・発注・日報・写真
建て役者要問い合わせ要問い合わせ公式に記載なしパソコン・タブレット顧客・商談・見積り・工事・原価・発注・請求・支払・電子契約
KAKUSA5,000円〜50,000円〜公式に記載なしクラウド見積り・予算・原価・日報・発注・請求・支払
ANDPAD 引合粗利管理要問い合わせ要問い合わせ公式に記載なしクラウド見積り・実行予算・入金・経理帳票(施工管理はANDPAD本体)

金額はいずれも税抜です。

料金を公開していない製品は、使う人数やカスタマイズの内容で見積りが変わるため、同じ条件で複数社から見積りを取って比べてください。

AnyONE:工務店の業務を一元管理

料金
要問い合わせ
提供形態
Windowsアプリ+スマホアプリ
お試し
公式に記載なし
向いている会社
社員10〜50名規模の中堅工務店
導入4,300社超エクセル風の操作業務を一元管理会計連携はカスタマイズ

AnyONE(エニワン)は、工務店・リフォーム会社の業務に向けて10年以上改良を続けてきた業務管理システムで、公式サイトでは導入企業4,300社超、サービス利用継続率99.2%と案内しています。

見積りから実行予算・発注、入出金までをつなげて、工事ごとの収支や利益をいつでも確認できるようにした設計です。

帳票はエクセルのような操作感で作れ、エクセルからのコピー&ペーストや、Excel・CSV形式のデータの引き継ぎにも対応しています。Excelで見積りを作ってきた会社でも、移りやすい製品です。使い方は、Windowsパソコンにインストールするアプリ(インターネット接続が必要)が中心で、スマートフォンのアプリもあります。

料金は公開されておらず、月額利用料と初期契約費用は、事業規模に合わせた提案を受ける形です。導入時の講習はオプションで、オンライン講習(2時間)は5万円(税別)です。

会計ソフトとの連携は基本機能にはなく、カスタマイズで対応した実績があると公式のよくある質問で案内しているので、会計ソフトとつなぎたい場合は事前に確認してください。

良い点:見積りから請求・進捗・原価管理までが一つにまとまり、エクセルのような操作感でITに不慣れなスタッフにも使いやすい

気になる点:案件が多いときや複雑な帳票で表示・処理に時間がかかることがあり、拠点別などのレポートを柔軟に作りにくい

カバーする業務範囲

  • 顧客管理(問い合わせから契約・アフターまで)
  • 見積り・実行予算・発注
  • 工事・施工管理(工程表・契約書の作成)
  • 入出金管理(請求・原価・利益)
  • 写真・書類の管理
  • アフターメンテナンス管理

こんな工務店に向いている

  • 社員10〜50名規模の中堅工務店・リフォーム会社
  • 見積りから請求・アフターまで、業務全体を一本のシステムでつなぎたい会社
  • Excelで管理してきた見積りから移りたい会社

アイピア:料金公開のクラウド型

料金
月額10,000円から(ライト)
提供形態
クラウド
お試し
デモ体験
向いている会社
10〜30名で現場とのやり取りを重視
料金を公開スマホで入力インボイス対応継続率98%

アイピア(Aippear)は、クラウド型の建築業向け管理システムで、公式サイトでは導入実績500社以上、ユーザー数10,000以上、継続率98%と案内しています。

AnyONEがWindowsパソコンのアプリを中心にしているのに対し、アイピアはブラウザで使う前提で作られています。そのため、スマホやタブレットから現場で確認・入力する運用に向いています。

料金はプランごとに公開されており、ライトプランは初期費用120,000円、月額10,000円(5ユーザーまで、1ユーザー追加ごとに2,000円)です。ベーシックは月額20,000円から、プロフェッショナルは月額30,000円から(いずれも5ユーザーまでの最低月額・税抜)で、この2プランの初期費用は問い合わせる形です。

料金を見てから比べられるので、AnyONEより導入の判断がしやすいでしょう。

インボイス制度に対応した請求書を作れ、電子帳簿保存法への対応方法を案内するページも用意されています。一方で、写真・図面を協力会社と細かく共有する施工管理の機能を重視する場合は、ANDPADと比べて検討すると確実です。

良い点:見積りから工事台帳・原価までがつながり、工事ごとの粗利が数字で分かる。スマホからの入力・確認がしやすく、月末の締め作業が短くなったという声もある

気になる点:LINE WORKSへの通知の種類、外部のストレージや協力会社へのスケジュール共有、システム内での電子契約、予定と実績の見せ方について、改善を望む声がある

カバーする業務範囲

  • 顧客管理・営業進捗管理
  • 見積作成
  • 発注書作成・原価管理
  • 入金管理・支払管理
  • 工程管理・点検管理
  • 写真管理

こんな工務店に向いている

  • 10〜30名規模で、複数拠点や現場とのやり取りを重視する会社
  • 料金を確かめたうえで、クラウド型を導入したい会社
  • スマホからの入力を前提に運用したい会社

サクミル:少人数向けの低価格クラウド

料金
月額9,800円から(20アカウント)
提供形態
クラウド
お試し
2か月の無料トライアル
向いている会社
社員30名以下の小規模工務店
初期費用0円追加料金なしで全機能導入3,000社以上

サクミルは、株式会社プレックスが提供する建設業向けの業務管理システムで、公式サイトでは導入社数3,000社以上と案内しています。料金は月額9,800円から(税抜)で20アカウントまで含まれ、初期費用は0円です。20アカウントを超える場合の料金は料金ページに記載がないため、問い合わせて確認してください。

案件管理・スケジュール・作業日報から、見積管理・実行予算・原価管理・請求管理・発注までを追加料金なしで使えます。AnyONEを入れるほどの規模ではないものの、Excelと紙とFAXの組み合わせに限界を感じている会社が、初めて入れる業務管理システムとして検討しやすい製品です。

2か月間の無料トライアルがあり、期間が終わっても自動で課金されません(2026年9月時点)。実際の案件を一件入れてみて、現場の人が使えるかを確かめてから判断できます。

良い点:価格の割に機能が多い。画面がシンプルで、職人を含めて使いやすい。見積りのコピーや複数人での同時編集が便利

気になる点:スケジュール画面や画像フォルダの動作が重いことがある。予定の入力や見積りのステータス変更に手間がかかり、見積書のテンプレートを自社の書式に変えにくい

カバーする業務範囲

  • 顧客管理・案件管理
  • スケジュール・作業日報・出面管理
  • 写真管理・ファイル管理
  • 見積管理・実行予算・原価管理
  • 請求管理・工事台帳
  • 発注・仕入管理

こんな工務店に向いている

  • 社員30名以下の小規模工務店・一人親方
  • まずはExcelや紙の管理から移りたい会社
  • 低い費用で業務管理システムを始めたい会社

建て役者:カスタマイズ型のロングセラー

料金
要問い合わせ
提供形態
パソコン・タブレット
お試し
公式に記載なし
向いている会社
社員20〜100名規模の中堅工務店
1社ごとに作り込み電子契約が標準導入740社以上

建て役者は、株式会社システムサポートの工事管理システムで、2005年に石川県金沢市で生まれ、公式サイトでは740社以上が導入していると案内しています。

「世界にひとつしかない、御社にぴったりのシステムをお届けいたします」という考え方のとおり、1社ごとの経営方針や業務の流れに合わせてシステムを作り込めるのが特徴です。

顧客管理・商談管理・見積作成・電子契約・工事管理・工程管理・予算管理・原価管理・発注・請求・支払・電子受発注が標準の機能としてそろっています。自社の見積書の書式、独自の工程の区分、特有の請求ルールなど、「うちのやり方は特殊なので既製品では合わない」と感じている工務店に向いています。

料金は、初期費用・月額費用・オプションとカスタマイズ費用で構成され、金額は公開されていません(要問い合わせ)。カスタマイズの内容によって費用と導入期間が変わるため、小規模な工務店では使わない機能まで作り込まないよう、必要な範囲を決めてから見積りを取ってください。

カバーする業務範囲

見込み客の商談から契約、工事管理、アフターフォローまでの情報を一元化します。情報はすべて顧客に紐づけられるため、部門を超えて情報を共有できます。

こんな工務店に向いている

  • 社員20〜100名規模の中堅工務店・ハウスメーカー
  • 独自の業務の流れがあり、既製のクラウドサービスでは合わない会社
  • 基幹システムに中長期で投資できる会社
住宅の外壁でシーリング工事をする職人

KAKUSA:原価と利益の管理に特化

料金
月額5,000円から(税別)
提供形態
クラウド
お試し
公式に記載なし
向いている会社
1〜30名で利益の管理に課題がある
スマホ日報で労務費外注の支払予定管理インボイス対応補助金の対象

KAKUSA(カクサ)は、アクティブシステム株式会社が提供する中小建設業向けのクラウド型工事原価管理システムです。「中小の建設工事業者のお金の管理がまるっと解決」を掲げ、公式サイトでは従業員1〜30名ほどの会社の導入が多いと案内しています。

スマホから日報を登録すると、従業員の勤怠表や現場ごとの出面が自動で集計され、工事原価の労務費にも反映されます。労務費を工事ごとに把握できるため、材料費と労務費を分けた見積りを作り、実績と比べる運用にも使いやすい仕組みです。外注先への支払残や支払予定も管理でき、請求書はインボイス制度に対応しています。

料金は初期費用50,000円から、月額5,000円から(いずれも税別)です。公式サイトでは、デジタル化・AI導入補助金2026の対象であることも案内しています(2026年9月時点)。

公式ページの機能一覧には顧客管理や工程管理がなく、業務全体の一元化よりも、お金の管理に絞った製品です。会計ソフトとの連携は、各業務のデータをCSVで出力する形です。

カバーする業務範囲

  • 見積り・工事受注
  • 実行予算・工事原価の管理
  • スマホ日報からの労務費・出面の自動集計
  • 発注・仕入・買掛
  • 請求・売掛、外注先への支払残と支払予定の管理

こんな工務店に向いている

  • 1〜30名ほどの中小工務店で、利益の管理に課題を感じている会社
  • 材料費と労務費を分けた見積りと、原価の把握を進めたい会社
  • AnyONEほどの機能は要らないが、Excelでの管理からは移りたい会社

ANDPAD 引合粗利管理:施工管理と併用

料金
要問い合わせ
提供形態
クラウド
お試し
公式に記載なし
向いている会社
ANDPADを使う元請と取引がある
施工管理と同じ基盤粗利の推移を確認経営管理はオプション

ANDPAD(アンドパッド)は株式会社アンドパッドの施工管理アプリで、公式サイトでは利用社数27.9万社・81.8万人と案内しています。

デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査(ミックITリポート2025年12月号)では、建設業マネジメントクラウドサービス市場でシェアNo.1とされています。

元請や大手ハウスメーカーがANDPADで現場を管理している例もあり、2025年5月には積水ハウスがグループ全体での導入を発表しました。取引先がANDPADを使っている場合、同じアプリで写真や工程を共有できると協業が進めやすくなります。

経営管理の範囲は、「引合粗利管理」というオプションで扱います。見積作成・実行予算・入金管理・経理帳票の出力などを備え、契約から実行予算、精算までの段階ごとに原価をまとめられます。追加工事のコストも反映しながら、案件ごとの粗利の推移を確認できます。会計サービスへは、専用の出力機能でデータを渡せます。

料金は初期費用・月額費用・オプション費用で構成され、金額は公開されていません(要問い合わせ)。顧客管理やアフター管理まで一つにまとめたい場合は、AnyONEなどの一元管理型と、扱える範囲を比べてください。現場の工程管理から始めたい場合は、小さな工務店の工程管理アプリの選び方もあわせてご覧ください。

良い点:案件ごとに写真や図面、チャットを社内・業者・職人とすぐ共有でき、現場へ確認に行く回数が減った

気になる点:複数の現場を持つと関係のない通知が多くなる。初期設定が複雑で、デジタルが苦手な職人は慣れるまで時間がかかり、他のシステムとの連携やライセンスの単位の調整にも不満の声がある

カバーする業務範囲

ANDPAD本体の施工管理機能(写真・図面・工程表・チャット・日報)に加えて、「引合粗利管理」というオプションで経営管理の領域を扱います。引合の段階から契約・工事・引渡しまでの粗利の推移を見える形にし、案件ごとの収益を管理できます。

こんな工務店に向いている

  • ANDPADを使う元請・ゼネコンと取引がある会社
  • 施工管理を中心に、経営管理のオプションを加えたい会社
  • 複数の現場や拠点で、工程・写真・図面を共有する必要がある会社

AI機能で注目のコンクルーAI

ここまで紹介した6製品は、導入実績のある定番のソフトです。これとは別に、AI機能を積極的に取り入れている製品として、株式会社コンクルーの「コンクルーAI」があります。2026年5月28日に、製品名を「コンクルーCloud」から「コンクルーAI」に変えました。

搭載するAIエージェント

発表によると、業務を代わりに進める次の4つのAIエージェントを備えています(2026年9月時点)。

  • 見積AIエージェント
    図面・写真・過去の見積りを参照して、見積書を作る
  • 工程表AIエージェント
    見積りや図面を読み取り、作業ごとの工程表を作る
  • 転記AIエージェント
    協力業者から届いた帳票の内容を、自社の見積りに反映する
  • 案件入力AIエージェント
    手書きのメモから現場の情報を登録する

料金と導入前の注意点

料金は、最小構成(1名利用)で月額9,900円から(税抜)で、14日間の無料トライアルがあります(2026年9月時点)。人数を増やしたときの料金はプランによって変わるため、20アカウントまで含むサクミルなどとは、同じ人数で見積りを取って比べてください。

推奨にあたっての注意点
コンクルーは2023年9月に設立された会社で、製品もAI機能も新しいものです。事業の継続性も含めて判断できるよう、まずは無料トライアルで自社の見積りを試してから導入を決めるのが現実的です。


会計ソフト・電子契約と組み合わせる

工務店の業務管理ソフトは、単体で使うより、会計ソフトや電子契約サービスと組み合わせると効果が出やすくなります。業務管理ソフトで工事ごとの利益を管理し、会計ソフトで記帳と申告を行うという分担にすれば、同じ数字を二度入力する手間が減ります。

会計ソフトとの連携

クラウド会計のfreeeやマネーフォワード クラウド会計と連携できれば、業務管理ソフトで作った請求書や入金のデータを仕訳に反映できます。ただし、紹介した製品の連携の方法はさまざまで、AnyONEはカスタマイズで対応、ANDPADは会計サービス向けの出力機能、KAKUSAはCSVの出力です。

導入前に、自社の会計ソフトにどの形でデータを渡せるかを確かめてください。会計ソフトの選び方は、行政書士事務所のクラウド会計比較でまとめており、工務店でも同じ基準で考えられます。

電子契約サービスとの連携

工事請負契約書・注文書・注文請書を電子化すると、施主との契約を早く結べるうえ、印紙代も減らせます。

代表的なサービスには、クラウドサイン、GMOサイン、freeeサインなどがあり、建て役者のように電子契約を標準の機能に含む製品もあります。電子契約サービスの選び方は、中小企業の電子契約サービス比較をご覧ください。


ソフトで合わない部分をどう補うか

ここまで読んで気づいた方もいるかもしれませんが、どのソフトも工務店の業務をすべて完全にカバーできるわけではありません。導入したソフトが使われなくなる理由の多くは、自社の業務の流れと、ソフトが想定している業務の流れが少しずつ合わないことにあります。

合わない部分と導入の手間

たとえば、次のようなずれです。

  • 自社特有の見積項目の並びが、ソフトのテンプレートに合わない
  • 協力業者ごとに異なる発注のルールを、ソフトが吸収しきれない
  • アフター点検の通知のタイミングが、自社の運用と合わない

導入の前後には、次のような手間もかかります。

  • 単価マスタや過去の見積りを登録する手間
  • 使う人と入力のルールを決め、現場に定着させるまでの時間
  • 月額費用に見合うだけ、作業時間や原価のずれが減っているかの確認

自社特有の部分の補い方

こうしたずれは、ソフトを乗り換えても解決しないことが多いため、標準的なソフトで業務の大部分をまかない、自社特有の部分だけを別の仕組みで補う方法が現実的です。

久野

どのソフトも工務店の業務をすべてカバーできるわけではありません。大部分は標準のソフトでまかない、自社特有の部分だけを別の仕組みで補うのが現実的です。

たとえば、過去の似た案件から見積りの下書きを作る仕組みは、見積りを自動で下書きする設計で紹介しています。補う部分を作る費用の目安は、業務システムの費用相場にまとめました。

業務システムのご相談・お見積り

標準のソフトで合わない部分をどう補うかは、業務の流れを伺ったうえでご提案します。

▶ お問い合わせはこちら


まとめ

この記事の要点
  1. 建築見積ソフトは、規模・管理したい範囲・予算の三つで選ぶ
  2. 改正建設業法で材料費や労務費の内訳を示した見積書が求められる
  3. 候補を絞ったら、無料トライアルやデモで自社の見積書を一件作る

工務店の建築見積ソフトは、自社の規模・管理したい範囲・予算の三つで選ぶのが基本です。

  • 見積りから請求・アフターまでを一本化したい中堅の工務店
    ⇨ AnyONE
  • 少人数でコストを抑えたい
    ⇨ サクミル(月額9,800円から20アカウントまで使える)
  • 料金を確かめてクラウド型を選びたい
    ⇨ アイピア
  • 独自の業務の流れがある中堅以上の会社
    ⇨ 建て役者
  • 原価と外注費の支払を優先して管理したい
    ⇨ KAKUSA
  • ANDPADを使う元請との取引が多い
    ⇨ ANDPAD 引合粗利管理

2025年12月の改正建設業法の完全施行で、見積書に材料費や労務費の内訳を示すことが求められ、見積書を引渡しから10年保存するよう示されています。Excelと紙の運用では対応しにくい部分が増えているので、候補を絞ったら、無料トライアルやデモで自社の見積書を一件作ってみるところから始めてください。

工務店・建設業の勤怠管理システムは、次の記事で比べています。あわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

1981年生まれ、名古屋出身。株式会社ニューロシンク代表。

2008年に渡独し、ベルリンで約18年間エンジニアとして活動。ドイツの国家資格である職業訓練プログラム「アプリケーション開発専門IT技術者」を修了後、医療系の自社開発企業でデスクトップ・Webアプリケーションの開発に4年間従事しました。2022年からはドイツの大手SIer「Adesso SE」で、フルスタックエンジニアとしてリードポジションを務めました。

2026年に日本へ帰国し、同年9月に株式会社ニューロシンクを設立。愛知・岐阜・三重の町工場を主な対象に、AI導入と業務システムの改善を支援しています。提案だけで終わらせず、工場に足を運んで一緒に手を動かす。そんな現場に立つAIエンジニアでありたいと考えています。

著書「AI時代の海外移住戦略」

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