クリニック向け電子カルテ比較|訪問診療・多院展開・レセコン連携に対応しているのはどれか

「紙カルテの管理が限界に近づいている」「新規開業にあたって電子カルテを選びたい」「既存の電子カルテが古く、リプレースを検討している」――2026年現在、クリニック向けの電子カルテは大きな転換期を迎えています。

2026年6月の診療報酬改定では「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設され、電子処方箋への対応が診療報酬上の評価対象になりました。2027年以降のシステム更改では、クラウドベース・標準規格対応の電子カルテへの移行が国から強く推奨されています。さらに、AI による音声入力やSOAP草案の自動生成も、ここ1〜2年で一気に実用化が進みました。

これだけ環境が変わる中、「自院にとってベストな電子カルテは何か」を見極めるのは簡単ではありません。当記事では、クリニック向け電子カルテの主要6製品を、保険診療中心のクリニック院長・開業準備中の医師の方を主な読者として比較していきます。


目次

電子カルテを選ぶ前に整理すべき3つのポイント

製品の比較に入る前に、電子カルテの選定の軸を整理しておきます。ここを曖昧にしたまま比較を始めても、結局決められなくなりがちです。

① クラウド型か、オンプレ型か、ハイブリッド型か

電子カルテのシステム形態は大きく3つに分かれます。

クラウド型
インターネット経由で利用。初期費用が安く、自動アップデート、訪問診療にも対応可能

オンプレ型
院内サーバーで運用。長年の安定性があり、カスタマイズ性が高いが、初期費用と保守費用が高い

ハイブリッド型
院内サーバーとクラウドの両方にデータを保存。通信断やサーバー障害時にも運用継続できる

国は2027年以降、クラウドベースの電子カルテへの移行を強く推奨しています。2030年までに全国のクリニックで電子カルテ普及率100%という目標も掲げられており、これから新規導入・リプレースする場合は、クラウド型を基本に検討するのが妥当です。

② レセコン一体型か、レセコン分離型(ORCA連動など)か

電子カルテは、レセプト作成を担う「レセコン」と連動して運用されます。連動の仕方には2パターンあります。

レセコン一体型
電子カルテとレセコンが同じシステム内で動く。診察から会計までシームレス

レセコン分離型(ORCA連動など)
日本医師会が提供するORCAなど、既存のレセコンと連携させる方式

新規開業ではレセコン一体型が多数派ですが、既にORCAを長年使っているクリニックがリプレースする場合、レセコンはそのまま残して電子カルテだけ新しくする「分離型」が現実的な選択肢になります。

③ 電子処方箋に対応しているか

2026年6月の診療報酬改定で新設された「電子的診療情報連携体制整備加算」は、電子処方箋への対応が評価要件に含まれています。電子処方箋の医療機関への導入率は、現時点では2割弱にとどまっていますが、2030年までに全医療機関への普及を目指す方針が示されており、今後3〜5年で対応が事実上の標準になると見込まれます。

これからクリニックを新規開業する、あるいは電子カルテをリプレースする場合は、電子処方箋への対応状況を必ず確認してください。

自由診療・美容クリニックの電子カルテは別カテゴリ

当記事は保険診療中心のクリニックを対象としていますが、美容皮膚科・美容外科・自費不妊治療など、自由診療を中心とするクリニックでは、電子カルテに求める機能が大きく異なります。

自由診療では、医療記録に加えて、コース契約の消化管理・Before/After写真管理・CRM・物販在庫管理・カード決済連携が一体化したオールインワンシステムが必要になります。medicalforceやKARTE for Medicalといった自由診療特化型製品が該当します。


クリニック向け電子カルテ6製品の比較

ここから、電子カルテの主要6製品を比較していきます。

市場構造としては、累計シェア最大の老舗系(Medicom)と、新規開業で支持を伸ばすクラウド新興系(エムスリーデジカル・CLINICS)の二層構造になっており、本記事ではその両方をカバーしています。

製品名提供元タイプ月額目安特徴
エムスリーデジカルエムスリーグループクラウド・一体型月額11,800円〜新規開業シェア首位。AI入力支援が標準
CLINICSメドレークラウド・オールインワン要問合せ予約・問診・オンライン診療まで統合
Medicom クラウドカルテ/Medicom-HRf Hybrid Cloudウィーメックス(旧PHC)クラウド/ハイブリッド要問合せ累計シェア最大。全国120拠点サポート
CLIUS(クリアス)DONUTSクラウド・経営分析特化要問合せ経営分析・WebORCA連動に対応
MAPs for CLINICEMシステムズアプリケーション型クラウド要問合せオフライン対応・BCP重視
きりんカルテウィーメックス(旧FAVORITE)クラウド・ORCA連動無料プランあり月額0円から導入可能

1. エムスリーデジカル|新規開業シェア首位のクラウド型

エムスリーデジカルは、医師向けポータル「m3.com」を運営するエムスリーグループが提供するクラウド型電子カルテです。現在は新規開業クリニックにおける電子カルテのシェアで首位を獲得しています

最大の特徴は、初期費用0円・月額11,800円〜という圧倒的な低価格と、AI による業務支援機能です。患者ごと・医師ごとのよく使うオーダーを学習してリスト表示するAI機能、タブレット手書き入力、音声入力に対応しており、カルテ入力の手間を大幅に削減できます。

レセコンは一体型と、ORCA連動型の両方が選べるため、新規開業でも既存ORCAユーザーのリプレースでも対応可能です。連携機器の実績は90以上あり、検査機器・予約システム・問診システムとの連携も豊富です。

こんなクリニックにおすすめ

  • 新規開業でコストを抑えながら最新機能を使いたい方
  • AI入力支援を活用してカルテ作成時間を短縮したい方
  • 既存ORCAを残してカルテだけ新しくしたい方

2. CLINICS|予約・問診・オンライン診療まで統合したオールインワン

CLINICSは、株式会社メドレーが提供するクラウド型電子カルテで、電子カルテ・レセコン・予約・問診・オンライン診療・患者アプリ・自動精算機までを一貫して提供するのが最大の特徴です。

ベースとなるレセコンには、日本医師会が提供するORCAを内蔵しており、保険診療の標準的な算定処理に強みがあります。「AI要約アシスト」で診察音声からSOAP形式のカルテ草案を自動生成し、「AI文書アシスト」で紹介状などの医療文書を生成する機能も標準搭載されています。

患者用アプリと連動して検査結果の送信や予約確認も可能で、患者体験の質を上げたいクリニックには有力候補になります。

こんなクリニックにおすすめ

  • 新規開業で予約・カルテ・オンライン診療を一気に導入したい方
  • AI機能を活用して医師の業務負担を最大限軽減したい方
  • 患者アプリでの情報共有を重視するクリニック

CLINICS予約は予約管理システムとして、こちらの記事でも取り上げています。

    3. Medicom クラウドカルテ/Medicom-HRf Hybrid Cloud|累計シェア最大の老舗

    Medicom(メディコム)は、ウィーメックス株式会社(旧PHC)が提供する電子カルテで、累計シェア最大の老舗です。1972年の医事コンピューター発売以来、50年以上の歴史を持ち、現在も電子カルテを導入しているクリニックの約24%がMedicomを使っているとのデータがあります。

    クラウド型の「Medicom クラウドカルテ」と、院内サーバーとクラウドの両方にデータを保存するハイブリッド型「Medicom-HRf Hybrid Cloud」の2製品ラインを持ち、いずれもレセコン一体型です。全国120拠点の販売代理店網と70拠点の保守サービス会社網による三位一体のサポート体制が最大の強みで、特に地方のクリニックや、即時対応を重視するクリニックから高い評価を得ています。

    AI 自動算定機能を搭載し、カルテ入力内容から算定可能な項目を抽出して算定漏れを防止する機能や、領収書・処方箋などの帳票印刷物の自動発行機能も備えています。オンライン資格確認の導入件数業界トップという実績もあり、医療DXへの対応の早さでも信頼性が高いといえます。

    こんなクリニックにおすすめ

    • 全国どこでもサポートが受けられる安心感を重視する方
    • 既存のオンプレ電子カルテからクラウドへ段階的に移行したい方
    • 災害時・通信障害時の運用継続を重視するハイブリッド志向のクリニック

    4. CLIUS(クリアス)|経営分析機能とORCA連動が強み

    CLIUS(クリアス)は、株式会社DONUTSが提供するクラウド型電子カルテで、Webブラウザ上での直感的な操作性と充実した経営分析機能が特徴です。

    特筆すべきは、年次統計・診療時間分析・傷病名分析・リピート率分析など、多角的なデータ分析機能を標準搭載している点です。「自院の収益構造を可視化したい」「リピート率を改善したい」といった経営目線のニーズに応えられます。

    レセコンとしては、日本医師会標準レセプトソフト「WebORCA」を使用する分離型ですが、まるで一体型のように動作する設計になっており、すべての日常業務をカルテ上で完結できます。オンライン診療機能も標準搭載されており、予約から診察、処方まで一連の流れを効率化できます。

    こんなクリニックにおすすめ

    • 経営データを定量的に分析したい院長
    • 既にORCAを使っており、その操作感を活かしたい方
    • オンライン診療と来院診療を併用するクリニック

    5. MAPs for CLINIC|オフライン対応・BCP重視のアプリケーション型クラウド

    MAPs for CLINICは、調剤薬局システム大手の株式会社EMシステムズが提供するクラウド型電子カルテです。最大の特徴は、インターネット回線が切断されても、オフラインで診察から処方箋発行が可能なハイブリッド構造を持つ点です。

    クラウド型電子カルテの最大のリスクは「通信断やサーバー障害時に診療が止まる」ことですが、MAPs for CLINICはこのリスクに対する明確な解答を提供しています。災害時・地域的な通信障害が起きた際にも、診療を継続できるBCP(事業継続計画)対策として有効です。

    Web予約や問診機能を標準搭載しており、診療科目ごと(小児科・整形外科・皮膚科・精神科など)の専門機能も充実しています。画面表示のカスタマイズ性も高く、診療科の特性に合わせた運用がしやすい点も評価されています。

    こんなクリニックにおすすめ

    • 災害対策・通信障害対策を重視する院長
    • 特定診療科の専門機能を必要とするクリニック
    • 高水準のセキュリティを求める医療法人

    6. きりんカルテ|月額0円から始められる低コスト訴求

    きりんカルテは、ウィーメックスが提供するORCA連動型のクラウド電子カルテで、月額0円の無料プランを持つ唯一のクラスの製品です。レセコンには日本医師会標準のORCAを使う分離型ですが、その分、電子カルテ部分の月額料金を抑えることができます。

    機能面では大手製品と比較するとシンプルですが、「コストを最小限に抑えて電子カルテを試験的に導入したい」「無床診療所で診察ボリュームが少ないため、最低限の機能で十分」というニーズには最適です。

    タブレット端末や電子ペンを使うことにより、カルテに手書き入力をできることが最大の特徴で、紙カルテの感覚で電子カルテを効率よく操作できます。

    こんなクリニックにおすすめ

    • 初期コスト・運用コストを抑えたい新規開業医
    • 試験的に電子カルテを導入してから本格的なシステムに移行したい方
    • 診察ボリュームが少ない無床診療所

    電子処方箋への対応状況

    ここからは、2026年現在で最も重要なポイントである電子処方箋への対応状況について整理します。

    電子処方箋とは

    電子処方箋は、紙の処方箋を電子データ化し、医療機関→電子処方箋管理サービス(国のシステム)→薬局という流れで処方情報を共有する仕組みです。重複投薬や禁忌薬剤のチェックがリアルタイムで行えるため、医療の質の向上と患者の安全に直結します。

    普及状況と2026年の改定

    電子処方箋の導入率は、薬局では8割を超えている一方、医科診療所では2割弱にとどまっています。これを受けて国は、当初の目標(2025年3月までに概ね全医療機関に普及)を見直し、電子カルテと電子処方箋を一体で2030年までに普及させる方針に切り替えました。

    そして2026年6月の診療報酬改定では、「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されています。これは医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算を再編・新設したもので、電子処方箋および電子カルテ情報共有サービスへの対応が要件に含まれます。電子処方箋未対応のクリニックは、この加算を取得できません

    各製品の電子処方箋対応状況

    製品電子処方箋対応備考
    エムスリーデジカル標準対応
    CLINICS標準対応
    Medicom クラウドカルテ業界トップクラスの導入実績
    CLIUSWebORCA経由で対応
    MAPs for CLINICオプション対応
    きりんカルテORCA連動経由で対応

    新規開業や全面リプレースの場合、電子処方箋に標準対応している製品を選ぶことを強くおすすめします。


    AI入力支援・SOAP自動生成への対応

    2026年に入って急速に普及しているのが、AI による音声入力とSOAP草案の自動生成機能です。診察中の医師と患者の会話を録音し、AI がリアルタイムで文字起こしと整理を行い、診察終了時にはSOAP形式のカルテ草案が出来上がっている、という運用が現実になってきています。

    各製品のAI機能対応状況

    製品AI音声入力AI算定支援AI文書生成
    エムスリーデジカル○(オーダー学習)
    CLINICS○(AI要約アシスト)○(AI文書アシスト)
    Medicom クラウドカルテ○(AI自動算定)
    CLIUS
    MAPs for CLINIC
    きりんカルテ××

    AI機能の活用は、1日30人〜50人を診察するクリニックでは、年間100時間以上の業務時間削減につながる可能性があります。新規開業や中堅以上のクリニックでは、AI機能の充実度を選定の重要な軸として位置づけることをおすすめします。

    AI による診療行為認められていない

    ここで、AI診療と AI 入力支援を混同しないように整理しておきます。

    AI による診療行為そのもの(診断・治療判断)は、現行法では認められていません。医師法第17条により、医業の主体は医師である必要があり、AI はあくまで医師の判断を支援するツールという位置づけであることが定められています。

    AI 音声入力・SOAP草案生成・算定支援などは、すべて「医師の支援」の範囲に収まっており、最終的な確認・修正・承認は医師が行うことが前提です。この点は、医療AI導入の検討時に必ず押さえておいてください。


    会計ソフト・レセプト請求との連携

    電子カルテを選ぶ際、もうひとつ重要なのが会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)との連携です。クリニックの収益は「窓口自己負担分」「保険診療分(社保)」「保険診療分(国保)」の3チャネルから入金されるため、これらを統合的に会計ソフトで管理できる構成が望まれます。

    連携の基本構造

    電子カルテ(レセコン一体型)から会計ソフトへのデータ連携は、CSV出力 → データの加工 → 会計ソフトへのインポートが標準的な流れです。より手間の少ないAPI による直結連携はまだ標準にはなっていません。

    freee 会計
    レセコンの月計表をCSV出力し、変換用Excelマクロを使って加工後、freeeにインポート

    マネーフォワードクラウド会計
    クリニック向け業種特化版が提供されており、医療材料ECサイト(アスクルメデトモ、メディカルサプライグッズ)との連携で仕入計上も自動化可能

    弥生会計
    CSVインポート対応

    業種特化版の有無

    freee・マネーフォワードのいずれも、クリニック向けの業種特化テンプレートを提供しています。勘定科目テンプレート(医療用機械備品・衛生管理費など)が標準搭載されているため、勘定科目のカスタマイズ作業を省略できます。


    まとめ:自院に合う電子カルテの選び方

    ここまでの内容を踏まえて、自院に合う電子カルテシステムの選び方を整理します。

    新規開業でコストとAI機能のバランスを取りたいなら
    ⇒ エムスリーデジカル

    新規開業で予約・カルテ・オンライン診療を一気に導入したいなら
    ⇒ CLINICS

    全国サポートと累計シェアの安心感を重視するなら
    ⇒ Medicom クラウドカルテ/Medicom-HRf Hybrid Cloud

    既存ORCAを残しつつ経営分析機能を強化したいなら
    ⇒ CLIUS

    通信断・災害時のBCPを重視するなら
    ⇒ MAPs for CLINIC

    初期コストを最小化したいなら
    ⇒ きりんカルテ

    こちらの記事では、クリニック向けの予約管理システムについて取り上げています。ぜひ、ご参照ください。

    電子カルテ導入・移行でお困りの方へ

    電子カルテは、一度導入すると10年以上使い続けるクリニックの基幹システムです。だからこそ、選定だけでなく、導入後の運用設計・他システムとの連携設計・将来のリプレース計画まで含めて考える必要があります。

    「複数のSaaSを使っているがデータが分散している」「レセコンから会計ソフトへの連携を自動化したい」「予約システムと電子カルテの間に独自のルールを挟みたい」「既存システムを残しつつ、足りない部分だけカスタム開発で補いたい」――こうしたご相談は、ぜひ当社のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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    この記事を書いた人

    1981年生まれ、名古屋出身。

    2008年よりドイツ・ベルリンに在住。
    ドイツの国家資格である職業訓練プログラム「アプリケーション開発専門IT技術者」を修了後、医療系自社開発企業にてデスクトップ・Webアプリケーションの開発に4年間従事。
    2022年よりドイツの大手SIer「Adesso SE」にて、フルスタックエンジニアとしてリードポジションを務める。

    2026年6月、AIエージェントと業務アプリ開発を軸とする株式会社ニューロシンクを設立。2027年に日本へ帰国し、日本の中小企業へのAI導入支援を本格的に開始予定。

    著書「AI時代の海外移住戦略

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