クリニック電子カルテ比較|クラウド型6製品の料金・訪問診療対応

電子カルテは、一度入れると長く使い続けるクリニックの基幹システムです。

新規開業で最初の一台を選ぶ場合も、古くなったシステムを入れ替える場合も、料金だけでなく、レセコンとの組み合わせや訪問診療・分院への対応、予約システムとの連携まで見ておかないと、導入した後に手作業が残ってしまいます。

さらに、国は医療DXの一環として、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの普及を進めています。2026年6月の診療報酬改定では「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設され、電子カルテがどの制度に対応しているかによって、届け出られる区分が変わるようになりました。

この記事では、保険診療が中心のクリニックの院長や開業準備中の医師の方に向けて、クリニック向けのクラウド型電子カルテ6製品を比較します。料金・仕様は、2026年9月時点の各社公式の情報です。

この記事で分かること
  • 状況別に選ぶクリニック向けクラウド型電子カルテ6製品
  • クラウド型・オンプレ型と、レセコンの一体型・連携型の選び方
  • 訪問診療・分院・予約連携への各製品の対応
  • 電子処方箋や新しい加算など、医療DXの制度と各製品の対応

目次

状況別に選ぶ電子カルテの早見表

先に、状況ごとの候補をまとめます。自院の状況に近い行から候補を2〜3製品に絞り、資料請求や見積りに進むと、比較の手間を減らせます。

久野

電子カルテは長く使う基幹システムです。料金だけで決めず、レセコンの組み合わせと自院の診療の形から候補を2〜3製品に絞り、見積りに進んでください。

自院の状況候補選ぶ理由
料金を公開している製品から、費用を抑えて始めたいエムスリーデジカル初期費用0円。ORCA連動型は月額11,800円から、レセコン一体型は24,800円から
予約・問診・オンライン診療までまとめて入れたいCLINICS同じシリーズで予約から会計まで扱え、分院の切り替えにも対応
近くで対面のサポートを受けたいMedicom全国174のサポート拠点。院内サーバーの障害時にクラウドへ切り替わるハイブリッド型もある
訪問診療と分院の機能を追加料金なしでそろえたいCLIUS在宅機能を無料で使え、グループクリニック間で診察情報を共有できる
回線が止まっても診療を続けたいMAPs for CLINICオフラインで過去カルテの参照や処方箋の発行ができ、予備のLTE回線へ自動で切り替わる
費用をかけずにORCAと組み合わせたいきりんカルテ公式FAQでは主な機能が無料。クラウド型のWebORCAと連携する

訪問診療や分院、予約システムとの連携を重視する方は、後半の「訪問診療・分院・予約連携を比べる」で6製品の対応を一覧にしています。


電子カルテを選ぶ前に決めること

製品を比べる前に、提供形態とレセコンの組み合わせを決めておきましょう。この2つが決まると、候補は自然に絞られます。

クラウド型かオンプレ型かを決める

クラウド型電子カルテとは、カルテのデータを院内のサーバーではなく、インターネット上のサーバーに保存して使う電子カルテのことです。電子カルテの提供形態は、大きく次の3つに分かれます。

提供形態データの置き場所向くケース・注意
クラウド型インターネット上のサーバー初期費用を抑えやすく、更新は自動。院外や訪問先でも使いやすいが、回線が止まったときの備えが要る
オンプレ型院内のサーバー動作が速く、細かい調整がしやすい。初期費用と保守費用が高く、数年ごとに機器の入れ替えが要る
ハイブリッド型院内のサーバーとクラウドの両方通常は院内のサーバーで動かし、障害時にクラウドへ切り替える

国も、クラウド型への移行を進めています。厚生労働省は、今のオンプレ型からクラウドネイティブ型への移行を図る方針を示しており、2026年3月には医科診療所向けの電子カルテの標準仕様を公表しました。

これから新規開業や入れ替えをするなら、クラウド型を基本に検討するのが現実的です。標準仕様の中身は、後半の「医療DXの制度と各製品の対応」で説明します。

クラウド型の弱点と備えを知る

クラウド型にも弱点はあります。いちばん大きいのは、インターネットの回線や提供元のサーバーが止まると、カルテを開けなくなることです。

製品によって備えは違い、MAPs for CLINICのように一部の機能をオフラインで使えるもの、Medicom-HRf Hybrid Cloudのように院内のサーバーとクラウドを切り替えるものがあります。

ほかにも、導入の前に知っておきたい点があります。

  • 月額費用がずっとかかるため、長く使うほど合計の費用は大きくなる
  • 画面の変更や独自の機能の追加など、細かいカスタマイズには限りがある
  • 回線の速さや院内のパソコンの性能によって、操作の速さが変わる

また、クラウド型でも、ログインの管理や院内のパソコンの対策はクリニック側の仕事です。患者の情報を守る基本は、中小企業のランサムウェア対策の基本でまとめています。

レセコンは一体型か連携型かを決める

電子カルテは、診療報酬の請求(レセプト)を作るレセコンと組み合わせて使います。組み合わせ方は、電子カルテとレセコンが一つになった「一体型」と、日本医師会のORCAなど別のレセコンとつなぐ「連携型」の2つです。

新規開業では、診察から会計、レセプトまでを一つの画面で扱える一体型が選ばれることが多くなっています。一方で、長くORCAを使ってきたクリニックが入れ替える場合は、レセコンはそのまま残し、電子カルテだけを新しくする連携型が現実的です。ORCAとつなぐ製品を選ぶときは、クラウド型のWebORCAと院内に置くORCAのどちらに対応しているかも確かめてください。たとえば、きりんカルテはWebORCAとだけ連携します。

自由診療が中心なら専用の製品を選ぶ

この記事は、保険診療が中心のクリニックを対象にしています。美容皮膚科・美容外科・自費の不妊治療など、自由診療が中心のクリニックでは、電子カルテに求める機能が大きく変わるためです。

自由診療では、カルテに加えて、次のような機能をまとめて備えた製品が必要になります。

  • コース契約・回数券の消化管理
  • 施術前後の写真の管理
  • 顧客台帳(CRM)と物販の在庫管理
  • カード決済・分割払い

こうした機能をまとめて備えているのは、自由診療向けのオールインワン製品です。たとえばmedicalforceは、予約・電子カルテ・コースや回数券の管理・写真管理・在庫管理・決済・LINE連携を一つにまとめています。


主なクラウド型電子カルテの比較

ここからは、保険診療が中心のクリニックに向くクラウド型電子カルテ6製品を比べます。料金は各社の公式ページに載っている範囲で書いており、載っていない製品は見積りになります。

スクロールできます
製品名提供元提供形態レセコン料金(公式)特徴
エムスリーデジカルエムスリーデジカル株式会社クラウド型一体型・ORCA連動型から選ぶ初期0円、月額11,800円〜(ORCA連動型)・24,800円〜(一体型)AIの自動学習が標準。会話の要約はオプション
CLINICS株式会社メドレークラウド型一体型問い合わせ予約・問診・オンライン診療・患者アプリまで同じシリーズ
Medicom クラウドカルテ/Medicom-HRf Hybrid Cloudウィーメックス株式会社クラウド型/ハイブリッド型一体型クラウドカルテ:初期0円、月額24,800円〜。ハイブリッド型は見積り全国174のサポート拠点。AI自動算定
CLIUS株式会社DONUTSクラウド型WebORCA(連携型)月額12,000円〜(レセコン別)/月額19,800円〜(レセコン込み)在宅機能・Web予約を無料で使える
MAPs for CLINIC株式会社EMシステムズクラウド型(アプリケーション型)一体型初期0円、月額20,000円(税別)オフラインでも一部の機能を使える
きりんカルテウィーメックス株式会社クラウド型WebORCA(連携型)公式FAQでは主な機能が無料予約・在宅機能を標準搭載

エムスリーデジカル:料金が分かりやすい

料金
初期0円、月額11,800円から
レセコン
一体型・ORCA連動型から選ぶ
訪問診療
対応(公式に記載)
向いている会社
新規開業で費用を抑えて始めたい
料金を公開AIの自動学習が標準iPad手書きアプリ90以上の連携実績

エムスリーデジカルは、医師向けサイト「m3.com」を運営するエムスリーのグループ会社、エムスリーデジカル株式会社が提供するクラウド型電子カルテです。公式サイトでは、m3.comの調査(2025年1月)をもとに「クラウド電子カルテシェア」8年連続No.1としています。

料金を公式に載せているのが特徴で、初期費用は0円です。ORCAとつなぐORCA連動型プランは月額11,800円から、レセコン一体型プランは月額24,800円(税抜)からで、一体型は端末の台数が増えても月額は変わりません。新規開業なら一体型、ORCAを使い続けたいなら連携型と、レセコンの状況に合わせて選べます。

AIの機能では、よく使う処置や、検査に対する傷病名を覚えて入力を助ける自動学習が標準で使えます。診察中の会話を書き起こしてSOAP形式に要約する「AIエージェント」は、月額8,800円からのオプションです。

ほかにも、iPadの手書きカルテアプリや、iPhoneでカルテを確かめられるモバイル版があり、公式サイトでは訪問診療などの診療形態にも対応するとしています。

連携の面では、90以上のサービス・機器との連携実績があります。同じ会社の診療支援システム「デジスマ診療」を組み合わせると、予約・受付・問診・会計の情報が電子カルテとつながります。

こんなクリニックにおすすめ!

  • 新規開業で、料金を確かめながら費用を抑えて始めたい方
  • AIでカルテの入力の手間を減らしたい方
  • 今のORCAを残して、カルテだけ新しくしたい方

CLINICS:予約から会計まで同じシリーズ

料金
問い合わせ(端末数によらず一律)
レセコン
一体型
訪問診療
居宅同意型の資格確認に標準対応
向いている会社
予約から会計までまとめて入れたい
予約〜会計が同シリーズ分院の切り替え患者アプリmelmoAI要約はオプション

CLINICSは、株式会社メドレーが提供するクラウド型の診療支援システムです。電子カルテはレセコン一体型で、同じシリーズに予約・Web問診・オンライン診療・患者アプリ「melmo」があり、自動精算機との連携もオプションで用意されています。

予約から受付、診察、会計までを同じシリーズの中で扱えるのが、いちばんの利点です。利用医療機関数は約3,500件(2025年12月末時点、オンライン診療と電子カルテの合計)です。

分院を持つクリニックにも向いており、分院の切り替えや法人内でのカルテの参照、グループ内の複数の施設を受診している患者の情報の紐付けに対応しています。オンライン資格確認は、外来に加えて訪問診療で使う居宅同意型にも標準で対応しています。

料金は、端末の台数やアカウントの数にかかわらず一律の料金ですが、金額は公式に載っておらず、問い合わせが必要です。AIの機能もオプションで用意されており(2026年9月時点)、診察中の会話を文字に起こして要約し、カルテに写せる「AI要約アシスト」と、療養計画書などの医療文書づくりを支える「AI文書アシスト」があります。

こんなクリニックにおすすめ!

  • 新規開業で、予約・カルテ・オンライン診療をまとめて入れたい方
  • 分院を持ち、患者の情報をグループで共有したい方
  • 患者アプリで予約や通知をまとめたい方

Medicom:クラウドとハイブリッドを選べる

料金
クラウド:初期0円、月額24,800円から
レセコン
一体型
訪問診療
ハイブリッド型に在宅医療向け機能
向いている会社
近くの拠点で対面のサポートを受けたい
全国174のサポート拠点ハイブリッド型ありAI自動算定

Medicom(メディコム)は、ウィーメックス株式会社が提供する電子カルテで、公式サイトでは富士経済の調査(2025年版)をもとに、診療所向け電子カルテシステムの「診療所シェアNo.1」としています。

クラウド型の「Medicom クラウドカルテ」と、ハイブリッド型の「Medicom-HRf Hybrid Cloud」があり、どちらもレセコン一体型です。

Medicom クラウドカルテは、初期費用0円、Basicプランが月額24,800円(税抜)からの完全クラウド型です。カルテの内容から算定できる項目を抽出して算定漏れを防ぐ「AI自動算定」を備えています。

Medicom-HRf Hybrid Cloudは、通常は院内のサーバーで速く動かし、院内のサーバーに障害が起きたときはクラウドのサーバーに切り替えて使えます。在宅医療の文書づくりやプロブレムリストの管理など、訪問診療向けの機能もそろっており、料金は見積りです。

強みは、全国174のサポート拠点による対面の支援です。公式サイトでは「オンライン資格確認導入件数No.1」ともしており、電子処方箋の導入の設定も任せられます。予約と問診は、オプションの「Medicom 診療支援」で追加できます。

こんなクリニックにおすすめ!

  • 近くの拠点から対面のサポートを受けたい方
  • 今のオンプレ型の電子カルテから、段階的にクラウドへ移りたい方
  • 災害や通信障害のときも、診療を続けられるようにしたい方

CLIUS:在宅と分院の機能が標準でそろう

料金
月額12,000円から(レセコン別)
レセコン
WebORCA(連携型)
訪問診療
在宅機能を追加料金なしで利用
向いている会社
訪問診療と外来を両方行う
在宅機能が標準グループで情報共有AIでSOAPを作成300種類以上の連携

CLIUS(クリアス)は、株式会社DONUTSが提供するクラウド型電子カルテです。レセコンにはWebORCAを使う連携型で、電子カルテだけの通常プランと、レセコンの費用を含む「CLIUS Direct」の2つのプランがあります。

Web予約・Web問診・在宅機能・オンライン診療は、追加料金なしで使えます。在宅機能では、訪問の予定を医師やスタッフごとに管理でき、患者の住所から訪問先の地図も開けます。グループクリニック間で患者の診察情報を共有できるため、分院を持つクリニックにも向いています。

ほかにも、診察の音声をAIが認識してSOAPを自動で作る機能や、AIの経営分析ツールを備えています。検査・画像などのシステムとは、300種類以上の連携実績があります。

こんなクリニックにおすすめ!

  • 訪問診療と外来を両方行うクリニック
  • 分院があり、グループで患者の情報を共有したい方
  • 経営の数字をデータで確かめたい院長

MAPs for CLINIC:回線の障害に強い

料金
初期0円、月額20,000円(税別)
レセコン
一体型
訪問診療
公式に記載なし
向いている会社
災害や通信障害への備えを重視する
オフラインで一部利用LTE回線へ自動切替診療科ごとの機能

MAPs for CLINICは、株式会社EMシステムズが提供する電子カルテで、パソコンに入れたアプリからクラウドを使う「アプリケーション型クラウド」を採用しています。

いちばんの特徴は、回線が止まったときの備えです。オフラインでも、過去のカルテの参照や一部のカルテの暫定入力、処方箋の発行ができます。専用のルーターを置けば、院内の回線に障害が起きたときにLTE回線へ自動で切り替わり、ハイブリッド構成のオプションを付ければ、窓口の会計まで含めて外来を続けられます。

料金は、初期ライセンス費用が0円、月額20,000円(税別)で、同時に使う2台目以降は1接続ごとに月額5,000円(税別)がかかります。Web予約・問診、レセコン、レセプトチェックのソフトが標準で含まれており、整形外科のリハビリ支援や小児科の成長曲線など、診療科ごとの機能もあります。

こんなクリニックにおすすめ!

  • 災害や通信障害への備えを重視する院長
  • 診療科に合った機能を使いたいクリニック
  • Web予約・問診も含めて、料金を分かりやすくしたい方

きりんカルテ:費用を抑えてWebORCAと使う

料金
公式FAQでは主な機能が無料
レセコン
WebORCA(連携型)
訪問診療
在宅機能を標準搭載
向いている会社
開業時の費用を抑えたい
解約の違約金なしWebORCAとだけ連携iPadでも使える平日のチャット対応

きりんカルテは、ウィーメックス株式会社が提供するクラウド型電子カルテです。公式FAQでは、導入すると主な機能が無料で使えるとしており、最低利用期間や解約の違約金もありません。有料になる範囲は、申し込みの前に運営元に確かめておくと安心です。

レセコンには、クラウド型のORCAであるWebORCAを使います。別にレセコンを買う必要はありませんが、院内に置くORCAとは連携できないので、今ORCAを院内で使っているクリニックは注意してください。予約と在宅の機能は標準で搭載されており、パソコンのほかiPadやSurfaceでも使えます。

大手の製品と比べると機能はシンプルで、サポートは平日10時から17時のチャットが中心です。訪問でのサポートは、提携する会社による有料のサービスになります。

こんなクリニックにおすすめ!

  • 開業時の費用を抑えたい方
  • まず電子カルテを試してから、本格的な製品に移りたい方
  • 患者数が多くない無床の診療所

訪問診療・分院・予約連携を比べる

訪問診療をしている、分院がある、予約システムを使っている、というクリニックは、電子カルテがそれぞれにどこまで対応しているかを先に確かめておきましょう。公式ページで確認できた範囲は次のとおりです。

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製品名訪問診療分院・グループ予約・問診
エムスリーデジカル対応(公式に記載)。iPhoneでカルテ確認公式に記載なしデジスマ診療と連携
CLINICS居宅同意型のオンライン資格確認に標準対応分院の切り替え・グループ内の患者情報の紐付け同じシリーズ(一体)
Medicomハイブリッド型に在宅医療向けの機能公式に記載なしMedicom 診療支援(オプション)
CLIUS在宅機能(訪問予定・地図)を無料で利用グループクリニック間で診察情報を共有Web予約・Web問診を無料で利用
MAPs for CLINIC公式に記載なし公式に記載なしWeb予約・問診を標準装備
きりんカルテ在宅機能を標準搭載公式に記載なし予約機能を標準搭載

「公式に記載なし」の製品でも、対応していないとは限りません。気になる項目は、資料請求や見積りのときに確かめてください。

訪問診療は持ち出しと在宅の機能を見る

訪問診療では、患者の自宅でカルテを見たり書いたりするため、外来とは求める機能が変わります。確かめたいのは、次の4点です。

  • タブレットやスマートフォンで、訪問先からカルテを見たり入力したりできるか
  • 訪問先で、居宅同意型のオンライン資格確認ができるか
  • 訪問の予定を、医師やスタッフごとに管理できるか
  • 在宅医療で使う文書を作りやすいか

訪問診療の件数が多いなら、在宅の機能を標準で備えたCLIUSやきりんカルテ、在宅医療向けの機能をそろえたMedicom-HRf Hybrid Cloudが候補になります。

外来が中心で、訪問診療は一部という場合は、タブレットで使えるかと、居宅同意型のオンライン資格確認に対応しているかを優先して見ると、選びやすくなります。

分院があるなら患者情報の共有を見る

分院を持つクリニックや、これから多院展開を考えているクリニックでは、同じ患者が複数の院を受診したときに、カルテを共有できるかが大切です。共有できないと、院ごとに患者を登録し直すことになり、アレルギーや処方の情報を見落とすおそれもあります。

今回の6製品では、CLINICSが分院の切り替えとグループ内の患者情報の紐付けに、CLIUSがグループクリニック間の診察情報の共有に対応していると、公式に明記しています。ほかの製品を選ぶ場合は、院をまたいでカルテを参照できるか、院ごとに契約が必要かを見積りの段階で確かめてください。

予約システムとの連携を確かめる

予約システムと電子カルテがつながっていないと、予約の情報を受付で入力し直すことになり、転記の手間やミスが残ります。連携の形は、同じ会社のシリーズでそろえる「一体型」と、別の会社の予約システムとつなぐ「連携型」に分かれます。

一体型の例は、予約機能を同じシリーズに持つCLINICSです。連携型では、エムスリーデジカルが同じ会社の「デジスマ診療」と受付・問診・会計の情報をやりとりでき、予約システムのドクターキューブもエムスリーデジカルを連携先に挙げています。

Medicomのシリーズは、予約システムのメディカル革命 byGMOとのAPI連携が2025年4月に始まりました。「連携できます」と書かれていても、患者の基本情報・受付・会計のどこまでがつながるかは組み合わせによって違うので、自院の運用で必要な範囲を確かめてください。

予約システムもあわせて見直す方は、診療予約システムの比較もご覧ください。


料金の目安と見積りの確認点

電子カルテの導入費用は、料金を公開している製品と、見積り制の製品に分かれます。クラウド型は初期費用を抑えやすい一方で、月額費用がずっとかかるため、5年・10年で合計していくらになるかで比べるのがおすすめです。

公開されている料金を比べる

公式ページで金額を確認できた製品は、次のとおりです。

スクロールできます
製品名初期費用月額費用補足
エムスリーデジカル0円ORCA連動型 11,800円〜、一体型 24,800円(税抜)〜AIエージェントはオプション月額8,800円〜
Medicom クラウドカルテ0円Basicプラン 24,800円(税抜)Premiumプランは問い合わせ。添付ファイルは10GBごとに月額300円(税抜)
CLIUS200,000円〜(通常プラン)/0円〜(CLIUS Direct)12,000円〜(レセコン別)/19,800円〜(レセコン込み)ユーザーIDや連携の数に応じて別途費用
MAPs for CLINIC初期ライセンス 0円20,000円(税別)2台目以降の同時接続は1接続ごとに月額5,000円(税別)
きりんカルテ公式FAQでは無料公式FAQでは無料WebORCAを使う。有料になる範囲は運営元に確認
CLINICS・Medicom-HRf Hybrid Cloud問い合わせ・見積り問い合わせ・見積りCLINICSは端末・アカウント数にかかわらず一律

ここに載せたのは電子カルテとレセコンの費用です。実際には、パソコンやプリンター、回線などの機器の費用と、予約や問診などのオプションの費用が別にかかるので、見積りの合計で比べてください。

見積りで確かめること

見積りを取るときは、月額の金額だけでなく、次の点もあわせて確かめておきましょう。

  • 端末の台数や同時に使う人数で、月額が増えるか?
  • レセコンの費用が含まれるか?(連携型ならORCAの費用が別にかかるか)
  • 今のレセコンや電子カルテからのデータ移行に、別の費用がかかるか?(エムスリーデジカルは他社レセコンからの移行を別料金としている)
  • 予約・問診・AIの機能が、標準かオプションか?
  • 解約するときに、カルテのデータを取り出せるか?

特にデータ移行と解約時のデータの取り出しは、後から変えにくい部分です。何年か先に別の製品へ移ることも考えて、契約の前に確かめておくと安心です。


医療DXの制度と各製品の対応

国は、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスなど、医療の情報を電子でやりとりする仕組みづくりを進めています。電子カルテがどの制度に対応しているかは、診療報酬の加算にも関わるので、選ぶときに確かめておきましょう。

電子処方箋とオンライン資格確認

電子処方箋は、紙の処方箋の代わりに、医療機関から国の電子処方箋管理サービスを通して薬局に処方の情報を届ける仕組みです。ほかの医療機関や薬局での処方・調剤の情報も参照できるため、重複投薬や併用禁忌をチェックしやすくなります。

厚生労働省の資料によると、2025年9月21日時点で電子処方箋の運用を始めたのは、薬局が51,978施設(93.0%)なのに対し、医科診療所は18,424施設で、医療機関側の導入はまだ途中です。国は目標を見直し、患者の情報を共有するための電子カルテが整う医療機関への導入を目指すとしています。

オンライン資格確認は、マイナ保険証などで患者の保険の資格を確かめる仕組みで、2023年4月から保険医療機関と薬局に導入が原則として義務づけられています。訪問診療では、患者の自宅で資格を確かめる「居宅同意型」も使われています。

新しい加算は区分で要件が変わる

2026年6月1日に施行された診療報酬改定では、医療DXに係る評価が改組され、「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されました。この加算は三つの区分に分かれ、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスへの対応によって、届け出られる区分が変わります。

区分初診時の点数電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスの要件
加算115点電子処方箋を発行する体制と、電子カルテ情報共有サービスで情報を共有する体制の両方
加算29点どちらか一方
加算34点どちらも求めない(オンライン資格確認の体制などで届け出る)

再診時は、区分にかかわらず月1回に限り2点です。

どの区分でも、オンライン資格確認を行う体制や、医療DXの取り組みの掲示などが求められます。電子処方箋に対応していないクリニックでも加算3は届け出られますが、上の区分を狙うなら、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスに対応した電子カルテが必要になります。

電子カルテ情報共有サービスと標準型電子カルテ

電子カルテ情報共有サービスは、診療情報提供書・退院時サマリー・健康診断報告書の3文書と、傷病名やアレルギー、検査などの6情報を、全国の医療機関や薬局で共有する国の仕組みです。

厚生労働省は、2026年度の冬ごろからの運用開始を目標にしており、使うにはオンライン資格確認の導入が前提になります。

あわせて国は、医科診療所向けの電子カルテの標準仕様(基本要件)を2026年3月31日に公表しました。求めているのは次の4点です。

  • 電子カルテ情報共有サービスと電子処方箋への対応
  • 複数の医療機関で共同利用するマルチテナント型のクラウドサービス
  • 関係するシステムとつなぐ標準APIの搭載
  • 別の製品へデータを引き継げる互換性

国が開発を進める「標準型電子カルテ」(医科診療所向け)は、2026年度中の完成を目指しています。厚生労働省は、遅くとも2030年には概ねすべての医療機関で、患者の情報を共有するための電子カルテの導入を目指すとしており、診療所の電子カルテの普及率は55.0%(2023年)です。

各製品の対応は、公式ページで確認できた範囲で次のとおりです(2026年9月時点)。

スクロールできます
製品名電子処方箋オンライン資格確認電子カルテ情報共有サービス
エムスリーデジカル対応対応国の正式リリースの案内後に順次対応予定
CLINICS導入をサポート(パッケージはオプション)外来・居宅同意型に標準対応公式に記載なし
Medicom導入の設定に対応対応(導入件数No.1と公式に記載)クラウドカルテは2027年対応予定
CLIUS対応対応対応予定
MAPs for CLINIC機能一覧に掲載機能一覧に掲載機能一覧に掲載
きりんカルテ公式に記載なし公式に記載なし公式に記載なし

電子カルテ情報共有サービスはまだ本格的な運用の前なので、各社の対応も「予定」が多い段階です。入れ替えを考えているなら、対応の時期と、追加の費用がかかるかを見積りのときに確かめておきましょう。


AIの入力支援と会計ソフトとの連携

最後に、ここ数年で広がってきたAIの入力支援と、レセコンから会計ソフトへのデータの渡し方を整理します。

AIの入力支援はオプションが多い

診察中の医師と患者の会話をAIが文字に起こし、SOAP形式に整理してカルテの下書きを作る機能が、電子カルテにも広がってきました。今回の6製品では、公式ページで次のAIの機能を確認できました。

製品名会話の書き起こし・要約入力や算定の支援
エムスリーデジカルAIエージェント(オプション、月額8,800円〜)処置・適応症の自動学習(標準)
CLINICSAI要約アシスト(オプション)AI文書アシスト(オプション)
Medicom クラウドカルテ公式に記載なしAI自動算定
CLIUSAI音声認識・SOAP自動生成AIオーダー推論、AI経営分析ツール
MAPs for CLINIC生成AIの補助機能(搭載予定)公式に記載なし
きりんカルテ公式に記載なし公式に記載なし

会話を要約する機能は、オプションで月額が上がる製品が多いので、料金を比べるときはAIの費用も含めて見てください。

最終的な判断は医師が行う

AIの入力支援を使うときに押さえておきたいのが、医師の役割です。厚生労働省は2018年12月の通知で、AIを用いた診断・治療の支援プログラムを使う場合も、診断や治療を行う主体は医師であり、医師が最終的な判断の責任を負うと示しています。

会話の書き起こしやSOAPの下書き、算定の支援は、どれも医師の仕事を助ける道具です。AIが作った下書きは、医師が内容を確かめ、直したうえでカルテに残す運用にしてください。

久野

会話の要約などのAIの機能はオプションの製品が多く、下書きを医師が確かめて直す運用が前提です。料金を比べるときは、AIの費用も含めて見てください。

会計ソフトへはCSVで渡す

クリニックの売上は、窓口での自己負担分と、社会保険・国民健康保険からの入金に分かれて入ってきます。電子カルテやレセコンから会計ソフトへデータを渡すときは、月ごとの集計表をCSVで出力し、会計ソフトの形式に合わせて取り込むのが基本の流れです。

API(システム同士を直接つなぐ仕組み)での直接の連携は、まだ一般的ではありません。CSVを出力できる項目や形式は製品によって違うので、使っている会計ソフトに取り込めるかを導入の前に確かめておきましょう。会計ソフトの違いはfreee・マネーフォワード・弥生の違いで、手作業での転記を減らす考え方は手入力をやめる業務自動化の設計で紹介しています。


まとめ

この記事の要点
  1. 電子カルテは、料金・レセコンの組み合わせ・自院の診療の形から選ぶ
  2. 訪問診療・分院・予約連携の対応は、見積りの段階で確かめる
  3. 電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスへの対応で加算の区分が変わる

電子カルテは、料金とレセコンの組み合わせ、そして自院の診療の形から選ぶと迷いにくくなります。状況ごとの候補は次のとおりです。

  • 費用をかけずにWebORCAと組み合わせるなら
    ⇨ きりんカルテ
  • 料金を確かめながら費用を抑えて始めるなら
    ⇨ エムスリーデジカル
  • 予約から会計までをまとめて入れ、分院とも共有するなら
    ⇨ CLINICS
  • 近くで対面のサポートを受けたいなら
    ⇨ Medicom
  • 訪問診療と分院の機能を追加料金なしでそろえたいなら
    ⇨ CLIUS
  • 回線の障害に備えたいなら
    ⇨ MAPs for CLINIC

あわせて、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスへの対応も確かめてください。2026年6月に新設された加算は、この2つへの対応で届け出られる区分が変わり、国は2030年に向けて電子カルテの標準化を進めています。

予約システムもあわせて選ぶ方は、クリニック予約システム比較で、予約方式や電子カルテとの連携の形を比べています。電子カルテ・予約・会計のあいだに手作業が残る場合は、ツール同士をつなぐ自動化も選択肢になり、自動化ツールの違いは業務自動化ツール比較でまとめています。

当社では、電子カルテと周辺のシステムの連携や、足りない部分の開発についてのご相談も受け付けていますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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この記事を書いた人

1981年生まれ、名古屋出身。株式会社ニューロシンク代表。

2008年に渡独し、ベルリンで約18年間エンジニアとして活動。ドイツの国家資格である職業訓練プログラム「アプリケーション開発専門IT技術者」を修了後、医療系の自社開発企業でデスクトップ・Webアプリケーションの開発に4年間従事しました。2022年からはドイツの大手SIer「Adesso SE」で、フルスタックエンジニアとしてリードポジションを務めました。

2026年に日本へ帰国し、同年9月に株式会社ニューロシンクを設立。愛知・岐阜・三重の町工場を主な対象に、AI導入と業務システムの改善を支援しています。提案だけで終わらせず、工場に足を運んで一緒に手を動かす。そんな現場に立つAIエンジニアでありたいと考えています。

著書「AI時代の海外移住戦略」

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