中小企業のSaaS管理|使っていないツールの棚卸しと解約のやり方

法人カードの明細を眺めていて、「この課金、何だったかな……」と手が止まった経験はないでしょうか? 月に数百円から千円台の見慣れない料金がいくつも並び、いつ・誰が・何のために契約したのかがはっきりしない、という状態です。

中小企業では、こうした知らないうちに増えた月額サービスの課金が、少しずつ利益を削っていることがあります。

ここで言う「SaaS」とは、ソフトを買い切るのではなく、月額や年額を払っている間だけ使えるクラウド型のサービスのことです。

そのSaaSの契約・アカウント・費用を把握し続けることを「SaaS管理」と呼びます。この記事では、中小企業が最初に取り組みやすい「使っていないSaaSを棚卸しして解約する」ところから、SaaS管理の進め方を紹介します。

進め方は、次の4段階です。

  1. 支払い・アカウント・利用状況の三方向から、契約中のSaaSを洗い出す
  2. 使っているか、代わりがあるかで、解約・プラン変更・継続を決める
  3. データの取り出しと連携の確認を済ませてから解約する
  4. 一覧表を残し、更新日の前や人の出入りのたびに見直す

記事中の各サービスの契約条件・料金は、2026年9月時点の公式情報です。

この記事で分かること
  • SaaS管理で把握するものと、ムダな契約が積み上がる理由
  • 使っていないSaaSを漏れなく洗い出す三つの方法
  • 解約前に確かめるデータ・連携・更新日と、年払いの注意点
  • 見直しを続ける一覧表の作り方と、SaaS管理ツールを使う目安
目次

SaaS管理とは?何を把握するのか

SaaS管理と聞くと、専用のツールを入れて情報システム部門が行う仕事を思い浮かべるかもしれません。ただ、中小企業にとっての出発点は、もっと手前にあります。

久野

SaaS管理は、専用のツールを入れる前に「いま何にお金を払っているか」の一覧を作るところから始めれば十分です。

契約・アカウント・費用の三つを把握する

SaaS管理は、会社が契約しているSaaSについて、次の三つを把握し続けることです。

  • 契約:何を、どのプランで、いつまで契約しているか(更新日・支払い方法)
  • アカウント:誰に発行していて、実際に誰が使っているか
  • 費用:毎月・毎年いくら払っていて、合計はいくらか

大きな会社では、アカウントの自動発行やセキュリティの統制まで含めて管理します。一方で中小企業がまず手を付けるなら、費用のムダを止めるところから始めるのが取り組みやすく、効果も目に見えます。

使っていないSaaSを探す作業は、そのまま「何を契約しているか」「誰が使っているか」を確かめる作業でもあります。棚卸しを一度やり切ると、SaaS管理に必要な一覧がそのまま手元に残ります。

契約が積み上がるのは把握する人がいないから

SaaSのムダが起きやすいのは、社長がすべての支払いを見きれなくなる一方で、管理の仕組みがまだない規模の会社です。

従業員が10人に満たないうちは、社長がほぼすべての支払いを見ているので、何を契約しているかを頭の中で把握できます。

人数が増えて情報システム部門や購買のルールができると、勝手な契約は起きにくくなります。その間にあたる会社では、契約する権限は分散しているのに、それを把握する人がいないため、次のようなムダが起こりがちです。

  • 無料トライアルのつもりが、解約を忘れて自動で有料プランに切り替わっている
  • 同じようなことができるツールを、部署ごとに別々に契約している
  • 契約した本人が異動や退職をして、誰も中身を知らないまま課金だけが続く

これは「だらしない会社」だから起きるわけではなく、一つひとつの金額が小さいために優先順位が上がらず、放置されてしまうのです。

誰が何を持っているのか分からない状態は、業務が特定の人に張り付く属人化とも地続きの問題で、その整え方は属人化した業務をAIに任せる前にやることでも扱っています。

棚卸しで見つかるムダの例

抽象的な話が続くとイメージしづらいので、従業員30人ほどの会社を想定した例で、棚卸しでどれくらいのムダが見つかるかを見てみます。

支払いを一つずつ確かめたところ、毎月課金されているSaaSが18件、合計でおよそ7万円あったとします。一つひとつは小さな金額でも、束ねると無視できない額になります。

下の表は、その18件のうち「誰も使っていない」「同じ用途のツールが二重にある」ものを中心に、一部を抜き出したものです。

スクロールできます
サービスの種類月額の目安契約者最終利用見直しの判断
ビジネスチャット4,500円総務毎日継続
オンラインストレージ(A)3,000円総務毎日継続
オンラインストレージ(B)1,800円営業部3か月前用途が重複・解約
日程調整ツール900円退職者半年前解約
フォーム作成ツール(有料プラン)1,500円企画ほぼ使用なし無料プランへ変更
議事録の文字起こしツール2,200円不明5か月前解約
タスク管理ツール(重複分)1,600円営業部1年前解約

18件全体で解約や見直しの対象になったのが月におよそ2万円ぶんだとすると、年に直して24万円ほどが、使っていないものへの支払いだったことになります。

何かを我慢したり、値切ったりしたわけではなく、使っていないものをやめるだけで生まれる余裕です。棚卸しの価値は、この「痛みのない削減」にあります。

使っていないSaaSを洗い出す

では、どうやって「使っていないSaaS」を見つければよいのでしょうか? やみくもに探すと漏れが出るので、支払い・アカウント・利用状況の三方向から突き合わせるのがおすすめです。

支払いから逆引きする

もっとも漏れが少ないのは、「お金の出口」から逆にたどる方法です。法人カードの明細、銀行口座の引き落とし、「ご請求」「領収書」といった件名のメールを起点に、実際に支払っているサービスをすべて書き出します。

記憶や社内の申請書から一覧を作ろうとすると、申請せずに契約されたものが抜け落ちます。支払いから逆引きすれば、少なくとも「お金が出ているもの」は取りこぼしません。

年払いのサービスは月々の明細には出てこないので、直近1年ぶんをさかのぼって確かめてください。

発行したアカウントと使っている人を突き合わせる

次に、それぞれのSaaSの管理画面を開いて、「発行済みのアカウント数」と「実際に使っている人数」のずれを確かめます。たとえば10人分を契約しているのに、実際にログインしているのは6人だけ、というのはよくある話です。

この場合、使っていない4人分は、そのまま契約数を減らす余地になります。あわせて、退職した人のアカウントが残ったまま課金されていないかも確かめましょう。

退職した人のアカウントは、費用のムダであると同時に、社外から会社の情報に入れる入口が残っている状態でもあります。共有アカウントやパスワードの扱いは、中小企業の安全なパスワード管理で整理しています。

最終ログインから眠っているSaaSを見つける

最後に、それぞれのサービスの最終ログイン日や最終更新日を確かめます。契約は生きているのに、数か月以上誰もログインしていないサービスは、導入したときの意気込みのまま使われなくなった「眠っているSaaS」です。

こうしたものは、解約の第一候補になります。ログイン履歴を管理画面で見られないサービスは、担当していた人に「最近使っていますか?」と一声かければ、実態は少しずつつかめてきます。

書き出した結果を一覧表にする

三方向で見つけたものは、一つの表にまとめておくと、このあとの判断が楽になります。解約の判断と、あとで見直すときの両方に使うので、更新日まで書いておくのがポイントです。

項目書く内容
サービス名と種類例:オンラインストレージ(B)
料金月額か年額か、税込みの金額
支払い方法法人カード・口座の引き落とし・請求書のどれか
契約者・管理者契約した人と、いま管理画面に入れる人
アカウント発行した数と、実際に使っている人数
最終利用最後にログイン・更新された時期
更新日次に自動で更新される日(年払いは特に)
判断継続・解約・プラン変更と、その期限

どんな種類のサービスがあり得るかを思い出す手がかりとして、次の分野別の一覧を使ってください。

契約していそうなSaaSを分野別に確かめる

会社で契約しているSaaSは業務のあちこちに散らばっていて、意識しないと全体像がつかめません。下の一覧は、中小企業でよく使われるSaaSを分野別に分けたものです。

上から順に「自社では何を契約しているか」を思い出しながら確かめていくと、洗い出しの抜け漏れを減らせます。着眼点の列は、重複や放置が起きやすい組み合わせです。

連絡・ファイル・予定の共通ツール

全社で使うツールは、部署や個人がそれぞれ別に契約して、二重・三重になりやすい分野です。

サービスの種類主な用途棚卸しの着眼点
ビジネスチャット社内外の連絡・やりとり個人LINE併用や、部署ごとの別契約が起きやすい
Web会議・オンライン会議商談・面接・打ち合わせ他ツールの無料枠と有料契約が重複しがち
グループウェア・社内ポータル予定共有・掲示・回覧チャットやカレンダーと機能が重なる
社内wiki・ナレッジ共有マニュアル・情報の蓄積導入後に使われず放置されやすい
クラウドストレージファイルの保管・共有部署・個人ごとに別契約し、二重・三重になりやすい
オフィススイート(文書・表計算・スライド)書類の作成・共同編集個人アカウントのまま業務利用されていることがある
ファイル転送・大容量送信重い添付ファイルの受け渡し無料で足りるのに有料契約が残りがち
タスク管理・ToDo個人・チームの作業管理プロジェクト管理ツールと重複しがち
プロジェクト管理案件の進行・工数管理タスク管理・ガントと機能が重なる
日程調整会議・面談の日程調整カレンダー付属機能で足りることがある

経理・人事のバックオフィス

会計・給与・勤怠は、同じ提供元のツールを別々に契約していたり、乗り換え前の契約が残っていたりすることが多い分野です。

サービスの種類主な用途棚卸しの着眼点
クラウド会計記帳・決算・確定申告乗り換え前後で旧サービスの契約が残ることがある
経費精算立替・経費の申請と精算会計ソフトの標準機能と重複しがち
請求書発行・管理請求書の作成・送付・管理会計・販売管理と用途が重なりやすい
給与計算給与・賞与の計算勤怠・労務ツールとセットで重複契約になりやすい
証憑保存・電子帳簿領収書・請求書のデータ保存会計ソフト付属機能と二重になりがち
ワークフロー・稟議承認申請・承認の電子化グループウェア機能と重複
電子契約・電子署名契約書の締結・保管印鑑・契約管理ツールと用途が重なる
勤怠管理出退勤・打刻・シフト給与・労務ツールと機能が重なりやすい
人事労務入退社手続き・社会保険・年末調整給与計算と提供元が同じで重複契約しやすい
採用管理求人・応募者の管理採用が止まっている期間も課金が続きやすい
eラーニング・研修社員教育・研修動画使う時期が偏り、閑散期に眠りやすい

営業・マーケティング・Web

営業やWebのツールは、担当者の異動や施策の終了で使われなくなっても、契約だけが残りやすい分野です。

サービスの種類主な用途棚卸しの着眼点
CRM(顧客管理)顧客情報の一元管理SFA・名刺管理と機能が重複しがち
SFA(営業支援)商談・案件の進捗管理CRMと一体のことが多く二重契約に注意
名刺管理名刺のデータ化・共有個人利用の無料版と法人契約が混在しがち
MA(マーケティング自動化)見込み客の育成・メール配信メール配信ツールと重複
見積・受発注管理見積書・注文の管理請求・販売管理と用途が重なる
問い合わせ・ヘルプデスク顧客サポート・問い合わせ対応チャットツールやメールと重複
チャットボット・AI電話自動応答・一次対応試験導入のまま課金が残りやすい
メール配信・メルマガ一斉メール・ステップメールMAやCRMと機能が重なる
フォーム作成問い合わせ・申込・アンケート無料で足りるのに有料プランが残りがち
検索順位・SEOツールキーワード順位・SEO分析施策が止まっても契約が残りやすい
SNS運用・予約投稿投稿の予約・分析担当者の退職で放置されやすい
サイト・LP作成(CMS・ノーコード)Webサイト・LPの制作作りっぱなしで更新されず課金だけ続く
デザイン作成資料・画像・バナーの制作個人が年払いで契約したまま埋もれやすい

AI・自動化とIT基盤

AIや自動化のツールは試しに契約されることが多く、IT基盤は契約した台数と実際の台数がずれやすい分野です。

サービスの種類主な用途棚卸しの着眼点
生成AI(文章・画像)文章作成・要約・画像生成個人契約が複数並立しやすい
議事録・文字起こし会議の記録・要約会議ツールやAIツールと機能が重複
業務自動化・iPaaSツール間の連携・自動化使われない自動化のまま契約が残る
RPA定型作業の自動化導入後に運用されず眠りやすい
パスワード管理ID・パスワードの共有・保管個人利用と法人契約が混在しがち
ウイルス対策・端末セキュリティPC・端末の保護契約台数と実台数がずれやすい
VPN社外からの安全な接続リモート縮小後も契約が残りやすい
バックアップデータの自動バックアップストレージ付属機能と重複
端末管理(MDM)貸与端末の管理台数と契約数がずれやすい
レンタルサーバー・ドメインサイトやメールの土台使っていない旧サイト・旧ドメインが残りがち
IT資産・SaaS管理契約・端末の一元管理棚卸しそのものを助けるカテゴリ

生成AIは、社員が個人で契約して経費で精算しているケースもあり、支払いの明細からしか見つからないことがあります。会社として使い方を決める手順は、社員が勝手にChatGPTを使っていた会社がやるべきことで紹介しています。

業種特化のツール

該当する業種の会社だけ確かめてください。業種向けのシステムは、汎用のツールと機能が重なって二重契約になっていることがあります。

サービスの種類主な用途棚卸しの着眼点
予約管理予約受付・リマインド(クリニック・美容・飲食)業種システムに含まれることがある
電子カルテ・レセコン診療記録・レセプト(医療)会計連携ツールと機能が重なる
介護記録・請求ケア記録・介護報酬請求(介護)勤怠・シフトツールと重複しがち
不動産管理・顧客管理物件・反響の管理(不動産)汎用CRMと二重契約になりやすい
工程・現場管理現場写真・日報・工程(建設・工務店)見積・原価ツールと重なる
在庫・生産管理在庫・受発注・生産(製造・小売)Excelや販売管理と併存しがち

一覧をひととおり確かめて「自社では何を契約しているか」を書き出せたら、次は一つずつ、残すかやめるかを決めていきます。

解約するか残すかを決める

洗い出しが終わったら、いよいよ解約の判断です。ただ、勢いで一気に解約すると、あとで「あれが必要だった」と困ることもあるので、いくつかの点を落ち着いて確かめてから決めましょう。

四つの点を確かめてから決める

判断の前に、次の四つを確かめます。

  • 本当に使われていないか? 利用者が少なくても、その一人にとっては欠かせない場合がある
  • 代わりになるツールがすでに社内にあるか? 用途が重なっているなら、片方に寄せれば自然と解約できる
  • 中に大切なデータが残っていないか? 顧客情報や過去の資料が入っているなら、解約前に取り出す
  • 契約は年払いか月払いか、次の更新日はいつか? 年払いは途中でやめても払った分が戻らないことがある

用途が重なっているツールは、どちらに寄せるかを先に決めると、解約の話が進みやすくなります。使っている人が一人でもいるなら、その人に代わりの方法があるかを確かめてから決めてください。

迷ったら下位プランや月払いに切り替える

判断に迷ったときは、いきなり解約せずに、いったん下位のプランに切り替えるという選択肢もあります。使っている機能が無料プランや安いプランで足りるなら、様子を見るのにちょうどよい落としどころです。

年払いの契約は、途中でやめても払った分が戻らないことがあるので、解約するなら更新日の前が基本になります。

たとえばGoogle Workspaceの年間/定期プランは、契約の満了前に解約しても契約料金の全額を負担する必要があり、ライセンスを減らして料金を下げられるのも更新時です。

Microsoft 365の法人向けプランも、請求アカウントの種類によっては、開始や更新から7日を過ぎると、解約しても日割りの返金を受けられません。

すぐにやめきれないものは、次の更新で月払いのプランに切り替えておくと、その後はいつでも止められる形にできます。

Google Workspaceのフレキシブルプラン(月払い)は、いつでも解約でき、解約料はかかりません。

解約の前に確かめること

解約そのものは、多くの場合、管理画面の操作だけで終わります。ただ、その前にいくつか確かめておかないと、データが消えたり、業務が止まったりする事故につながります。

久野

解約のボタンを押す前に、データの書き出しと更新日の確認だけは必ず済ませてください。消えたデータは戻せないことが多いからです。

必要なデータを先に取り出す

解約すると、しばらくしてデータが消えるサービスがあります。CSVやPDFで書き出せるものは、解約前に書き出しておきましょう。

たとえばMicrosoft 365は、期限が切れたあと「期限切れ」(30日)と「無効」(90日)の段階を経て削除されますが、サブスクリプションを明示的に削除すると、OneDriveを含むデータがすぐに削除されます。

Google Workspaceは、解約するとユーザーのデータが削除され、復元できなくなるため、解約前にデータ エクスポート ツールなどで保存するよう案内されています。

ほかのツールとの連携を確かめる

自動化の仕組みでほかのサービスとつながっている場合、片方を解約すると、自動で行われていた業務が止まります。たとえば、フォームの回答を表計算に書き込む、チャットに通知を送る、といった連携です。

連携の多い会社では、どこと何がつながっているかを書き出してから解約に進みましょう。連携に使うツールの種類は、業務自動化ツール比較(Zapier・Make・n8n)で紹介しています。

更新日と無料トライアルの終わりを確かめる

年払いのサービスは、更新日を過ぎると次の一年ぶんの契約に入ってしまいます。更新日の1か月ほど前に予定を入れておくと、解約のタイミングを逃しません。

無料トライアルも、終わると自動で有料になるものがあります。たとえばMicrosoft 365の法人向けの試用版は、定期請求をオフにしない限り、試用期間の終わりに年間サブスクリプションへ更新されます。

契約書や利用規約に、解約の申し出の期限(更新日の何日前までか)が書かれていることがあります。更新日だけでなく、申し出の期限も一覧表に書いておきましょう。

すんなり解約できないとき

解約を決めても、いざ手続きに入るとスムーズに終わらないことがあります。解約の入り口は、申し込みほど分かりやすく作られていないことも多いので、よくあるケースと進め方をまとめます。

  • 更新日が迫っていて迷う:使う見込みがなければ、早めに解約手続きだけ済ませる。自動更新の止め忘れを防げる
  • 解約のボタンが見つからない:サービス名と「解約」「退会」で検索するか、問い合わせ窓口で「解約したい」と伝える
  • 引き止めや電話での確認を求められる:使っていないなら予定どおり止める。電話のみの場合は受付時間を確かめて一度で済ませる

「安くなるなら」と流されて、使わないものを契約し直さないことが大切です。その場で片づかないものは「解約手続き待ち」として一覧表に書き、期限と連絡先を添えておけば、やりかけのまま忘れる事態を防げます。

棚卸しを続ける仕組みをつくる

一度棚卸しをしても、放っておけばSaaSの契約はまた増えていきます。ここからが、SaaS管理を「続ける」ための部分です。

一覧表を残して見直す時期を決める

棚卸しで作った一覧表は、捨てずに会社のSaaS台帳として残します。そのうえで、見直すタイミングを次のように決めておくと、手間をかけずに続けられます。

  • 年払いのサービスの更新日の1か月ほど前
  • 年に一度、決算の前などに全体を見直す
  • 社員が入社・退職・異動したとき(アカウントの発行と停止)

あわせて、新しくSaaSを契約するときは、先に一覧表へ書いてから申し込むというルールにしておくと、知らない契約が増えにくくなります。支払いをできるだけ法人カード1枚に寄せておくと、明細からの確認も楽になります。

会社全体のIT管理の中で、機器やサービスの台帳をどう位置づけるかは、次の記事でまとめています。

SaaS管理ツールを使うかを決める

一覧表の更新が追いつかなくなってきたら、SaaS管理ツールも選択肢になります。SaaS管理ツールは、社内で使っているSaaSの費用と権限を一か所で管理するためのツールです。

製品によって違いますが、たとえば次のような機能があります。

  • 会社が把握していないSaaSの利用を見つける
  • 退職した人のアカウントを見つける
  • 入社日・退職日に合わせてアカウントの発行・削除を自動で行う
  • 契約情報をまとめて管理し、既存の表計算の台帳を取り込む

たとえばマネーフォワード Adminaは、従業員50名(50ID)までなら全機能を無料で使えるプランを用意しています(2026年9月時点)。

製品の比較は、ITreviewのSaaS管理ツールのカテゴリで満足度やレビューを見比べられます。

  • 表計算の一覧表で足りる会社:契約が数えられる程度で、人の出入りが少ない
  • ツールを考えたい会社:契約やアカウントが多く、入退社のたびに停止漏れが出ている

どちらの場合も、最初の一覧表づくりは手作業の棚卸しが土台になります。ツールを入れる前に一度棚卸しをしておくと、ツールが見つけた結果とも突き合わせやすくなります。

まとめ

この記事の要点
  1. SaaS管理は、契約・アカウント・費用を把握し続けること。中小企業は使っていないSaaSの棚卸しから始める
  2. 支払い・アカウント・最終ログインの三方向から洗い出し、一覧表に更新日まで書く
  3. 解約の前にデータの書き出し・連携・更新日を確かめ、一覧表を残して定期的に見直す

使っていないSaaSの棚卸しは、我慢も交渉もいらない、数少ない痛みのないコスト削減です。支払いから逆算してすべての課金を書き出し、使っているかどうかを確かめたうえで解約し、最後に一覧表を残して見直しを続けます。

この流れを押さえておけば、年に何万円、規模によっては何十万円というムダを減らせます。まずは直近の法人カードの明細を、一枚開いてみるところからで十分です。

棚卸しに慣れてきたら、ソフトウェアのライセンス数の見直しや、会社のIT資産全体の管理へと少しずつ広げていくと、会社のお金とIT環境の見通しはさらにすっきりしていきます。

当社では、SaaSや機器の台帳づくりなどIT管理の土台づくりから、残したツールをつないだ業務の自動化、AIエージェントの構築まで、中小企業のご相談を受け付けています。

「何から手をつければいいか分からない」という段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

1981年生まれ、名古屋出身。株式会社ニューロシンク代表。

2008年に渡独し、ベルリンで約18年間エンジニアとして活動。ドイツの国家資格である職業訓練プログラム「アプリケーション開発専門IT技術者」を修了後、医療系の自社開発企業でデスクトップ・Webアプリケーションの開発に4年間従事しました。2022年からはドイツの大手SIer「Adesso SE」で、フルスタックエンジニアとしてリードポジションを務めました。

2026年に日本へ帰国し、同年9月に株式会社ニューロシンクを設立。愛知・岐阜・三重の町工場を主な対象に、AI導入と業務システムの改善を支援しています。提案だけで終わらせず、工場に足を運んで一緒に手を動かす。そんな現場に立つAIエンジニアでありたいと考えています。

著書「AI時代の海外移住戦略」

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