社内の規程やマニュアルはきちんと整備したのに、いざ必要なときに「どこに書いてあるのか分からず、結局ベテランの社員に聞かなければならない」。そんな経験はないでしょうか。せっかくのドキュメントも、見つけられなければ無いのと同じです。
この記事では、NotebookLMに社内の規程やマニュアルを読ませ、質問すれば該当箇所を根拠つきで答えてくれる状態を作る手順を、当社で実際に検証しながら解説します。ツールの細かい操作よりも、「何を読ませ、どう整理し、どう運用に乗せるか」という業務側の視点を中心にお伝えします。
なお、NotebookLMとGeminiを連携させて呼び出す方法など、ツールの操作・機能そのものについては別記事で詳しく扱っています。あわせてお読みいただくと、より使いこなせるはずです。
「聞けば答える」とはどういう状態か?
最初に、目指すゴールをはっきりさせておきます。
ここで目指すのは、社員が普段の言葉で質問すると、AIが社内資料の該当箇所を引いて答えてくれる状態です。たとえば「健康診断の予約は自分で取るの?」と聞けば、規程やFAQに書かれた当社のルールに沿って答えが返り、しかもどの資料を根拠にしたかが示される。
推測やネット上の一般論ではなく、当社の決まりごとに基づいて答える、というのがポイントです。
これが実現すると、それまで「資料を探す時間」「詳しい人に聞く手間」「人によって回答が違う」といった、地味に積み重なっていたコストが減ります。そして、属人化していた社内の知識が、誰でも引き出せるようになります。
この状態は資料をただアップロードすれば実現するわけではありません。何を読ませ、どう整えるかで精度が大きく変わってきます。
なぜ「整理」が精度を左右するのか
整理が不十分なまま使うとどうなるか?当社で試した例をひとつ紹介します。
健康診断に関する質問を、社内資料を読ませていないAIに投げたところ、実在する別の組織の名前を持ち出し、予約手順までもっともらしく作り上げて回答してきました。完全な作り話です。一方、社内資料を正しく読みこませたうえで同じ質問をすると、当社の実際のルールに従い正しい答えを返しました。
⇨ この検証についてはこちらの記事をご覧ください。
この検証が示すのは「何を読ませるか」が回答の正しさを決める、ということです。次の章からはその具体的な進め方を説明していきます。
これはRAGと同じ仕組み
手順に入る前に、NotebookLMが社内の知識をどう扱っているのか、その実態を押さえておきましょう。
少し回り道に見えますが、ここを理解しておくと「なぜ整理が大事なのか?」「何ができて、何ができないのか?」が理解できます。
NotebookLMがやっていることは、技術の世界で RAG(検索拡張生成) と呼ばれる考え方とほぼ同じです。RAGとは、AIに知識を丸暗記させるのではなく、質問のたびに外部の資料から関連箇所を取り出し、それを根拠にして答えさせる仕組みのことです。

図のように、質問を受けたら関連する箇所を資料から探し、その内容をAIに渡して、根拠つきの回答を作る——この流れはどちらも同じです。社内資料に書かれた範囲で答えるので作り話が起きにくく、どの資料を根拠にしたかを示せる、という長所も共通します。先ほどの健康診断の例で正しく答えられたのは、まさにこの仕組みが働いたからです。
違いは、その仕組みを自分で組み立てるか、出来合いで使うかだけです。RAGを自前で構築する場合は、資料の分け方や検索の方法、使うAIまで、すべて自分で選んで細かく調整します。対してNotebookLMは、それらの仕組みがすべてGoogle側に隠れていて、こちらが調整する余地はほとんどありません。手軽に使える代わりに、中身は触れない、管理されたRAGだと考えると分かりやすいでしょう。
この「管理されたRAG」という性質こそが、後ほど触れる参照範囲を固定できるという強みにもつながっています。
どの資料を読みこむか?
ここからが本題です。まず、AIに読みこむ資料を選びます。ここの選び方が、回答の精度をほぼ決めると言っても過言ではありません。
社内文書は三つの層で考える
社内の文書は、おおまかに三つの層で考えると整理しやすくなります。
- 規程 ⇨ 経費精算規程や在宅勤務規程のような、会社の公式なルールを定めた文書
- マニュアル ⇨ 業務の進め方や手順を示したもの
- FAQ ⇨ 「規程には書いていないが、実際によく聞かれること」をまとめたもの
この3つの層のうち、意外と侮れないのがFAQです。実務では、規程の条文だけでは答えが出ない質問がたくさんあります。たとえば「領収書を忘れたとき、ICカードの履歴で代用できるか」「在宅勤務手当と交通費は両方もらえるか」といった、現場で頻繁に発生する疑問です。こうした答えは規程には載っておらず、FAQにしか書かれていないことが多いです。
当社の検証でも、FAQにしか答えがない質問にAIが正しく答えられたことで、「FAQまできちんと読めている」ことが確認できました。逆に言えば、FAQを揃えずに規程だけ読ませると、現場のリアルな質問には答えられません。
読ませてはいけないものを外す
読ませるものを選ぶのと同じくらい、外すべきものを外すことも大切です。
特に注意したいのが、失効した書類の旧バージョンが混ざる事です。たとえば経費精算規程が改定された際に、出張時の宿泊費上限が変わったとします。新しいバージョンでは12,000円、古いバージョンでは8,000円だとして、両方をAIに読ませてしまうと、どちらを答えるか不安定になります。古いバージョンは外す、これが鉄則です。
同様に、内容が重複した資料や、まったく無関係な資料も混ぜないようにします。資料が少なくきれいに揃っているほうが、回答は安定します。「念のため全部入れておく」は、かえって精度を下げる行為だと考えてください。
まとめると、「答えがそこにしかない一次資料だけを過不足なく揃える」。これが読ませる資料を選ぶときの基本です。
AIが読みやすい形に整える
読みこませる資料が決まったら、AIが扱いやすい形に整えます。
ファイル形式をそろえる
まずはファイルの形式を揃えましょう。Word形式の文書はNotebookLMの取り込み一覧に表示されますが、Excel形式のファイルは一覧に出てこなかったりします。
Excelファイルは、いったんGoogleスプレッドシート形式に変換する必要があ1ります。変換すると、ちゃんと取り込み一覧に表示されるようになります。FAQを表形式で管理している場合などは、ここで引っかかりやすいので注意してください。
| 元のファイル形式 | NotebookLMで読めるか | 推奨対応 |
|---|---|---|
| Excel(.xls, .xlsx, .xlsm, .xltx) | ドライブ取り込み一覧に出ない | Googleスプレッドシートに変換すると使える |
| Word(.docx) | 読める | そのままでも可。挙動は検証日時点のもの |
| PowerPoint(.pptx) | 読める | 確実に同期させたいならGoogleスライドへ |
| PDF(.pdf) | 読める | 更新頻度が高い資料は純正形式が無難 |
| テキスト(.txt) | 読める | 同上 |
| Markdown(.md) | 読める | 同上 |
| CSV(.csv) | 読める | 同上 |
命名とフォルダ構成を整える
資料はGoogleドライブ上に、分かりやすい名前で、まとまった場所に置いておきます。後で「どれが現行版か」が一目で分かるように、ファイル名に版数や改定日を入れておくと、旧バージョンが混ざるのを防ぎやすくなります。

FAQは「そこにしか答えがない」形にする
少しコツのある話をします。FAQを作るときは、規程と内容を重複させるよりも、規程には書かれていない実務的な疑問への答えを集めるほうが効果的です。
理由は先ほど触れたとおりで、答えがFAQにしかない状態を意図的に作っておくと、AIは推測に頼らず、FAQの該当箇所を引いて答えるようになるからです。逆に、あちこちに似た記述が散らばっていると、AIがどれを根拠にすべきか迷い、回答が安定しません。「この質問の答えは、この資料のここにしかない」という状態を作ることが、精度の高い回答につながります。

NotebookLMにソースとして追加する
資料の整備ができたら、NotebookLMに読み込ませます。具体的に言うと、ソースとして追加します。
ドライブから追加で取り込む
ここで重要な選択があります。NotebookLMにソースを追加する方法には、ファイルを直接アップロードする方法と、Googleドライブから追加する方法の二つがあります。
ここでは必ず「ドライブから追加(マイドライブ)」を選んでください。アップロードで取り込んだ資料は、後から元ファイルを更新しても自動では反映されません。一方、ドライブから追加した資料は、元ファイルの変更を反映できる状態になります。

質問してみる
取り込みが終わったら、実際に質問してみます。普段の言葉で構いません。「健康診断の予約はどうすればいい?」のように聞くと、資料の該当箇所を引いた回答が返ってきます。
回答には、どの資料を根拠にしたかが示されます。この根拠表示を確認する習慣をつけておくと、AIの答えが本当に社内資料に基づいているかを、その場で検証できます。

会話をリセットしたいとき
検証や運用をしていると、会話の流れをいったん切りたくなることがあります。ここで戸惑いやすいのが、NotebookLM本体には「新しいチャット」のようなボタンが見当たらないことです。
会話をリセットするには、チャット欄の三点リーダー(操作メニュー)から「チャット履歴を削除」を選びます。ただし、削除した履歴は元に戻せません。残しておきたいやり取りがある場合は、削除する前にスクリーンショットを撮っておくことをおすすめします。

資料は最新の状態を保つ
社内の規程やマニュアルは、一度作って終わりではありません。改定されれば、AIの回答も最新の内容に合わせてほしいものです。ここでは、資料の更新がどうNotebookLMに反映されるのかを確認します。
元ファイルを更新したとき、その変更がいつNotebookLMの回答に反映されるのか。当社で検証として確かめたところ、ノートブックを開き直したタイミングで反映されるという挙動でした。具体的には、ファイルを更新した後、ノートブックを開いたままにしていても、1時間ほど待った時点では回答に反映されませんでした。しかし、ノートブックをいったん閉じて開き直すと、更新後の内容が回答に反映されました。
ここから言えることは、資料を更新したらノートブックを開き直すという一手間を、運用ルールに組み込んでおくことです。「更新したのに古い回答が返ってくる」という混乱は、たいていこの開き直しを忘れていることが原因です。
更新の運用としては、誰がいつ資料を改定し、改定したら旧バージョンをどう差し替えるか、までを決めておくと安心です。改定のたびに旧バージョンがドライブに残っていくと、古い情報元の混入につながります。
チームで安心して使う
最後に、複数人で使う場合の注意点です。ここには、見落とすと困る重要なポイントがあります。
ノートブックの共有は「中身を全部見せる」のと同じ
NotebookLMのノートブックは、他の人と共有できます。共有された相手は、そのノートブックの中で質問し、資料に基づいた回答を得られます。その共有はGoogleドライブでの権限とは独立します。
検証したところ、ドライブ上ではまったく共有していない元ファイルの中身が、ノートブックを共有しただけで、共有相手から読めてしまいました。共有相手は元ファイルへのアクセス権を一切持っていないにもかかわらず、ノートブック経由でその内容を参照でき、ソースの中身まで開けました。
つまり、ノートブックを共有することは、実質的に中の資料を全部見せることと同じだと考える必要があります。「回答だけ見せて、元資料は見せない」という想定は通用しません。
このことから、運用ルールはこう整理できます。ノートブックを誰に共有するかは、ドライブで機密文書を直接共有するのとまったく同じ慎重さで判断する。「とりあえず広めに共有しておく」は避け、その資料を見てよい人にだけ共有する。これを徹底するようにしましょう。
閲覧者と編集者の違い
ノートブックをチームメンバーと共有する時には権限を選べます。当社で確認したところ、閲覧者として共有された相手は質問と閲覧ができ、編集者として共有された相手はそれに加えてソースの追加・削除ができました。
資料を勝手に追加・削除されては困る相手には閲覧者を、共同で資料を育てていきたい相手には編集者を、というように使い分けます。ただし前項のとおり、どちらの権限でも資料の中身は読めます。

ドライブを直接AIに探させる使い方
Gemimiではチャット画面にてドライブを直接AIに探させることができます。
運用を続けていくとこのGeminiのドライブ検索とNotebookLMをどう使い分けるのかという疑問が出てきます。
答えとしては、漠然と資料を探したいときは、ドライブ全体を対象にした検索的な使い方が便利です。一方、答えがぶれては困る場面——たとえば規程に関する正しい回答が必要なときは、読ませる資料を絞ったノートブックのほうが向いています。
ノートブックなら参照する範囲を固定できるぶんだけ、同じ質問にいつも同じ根拠で回答してくれる、再現性のある状態を作れるからです。
まとめ
NotebookLMを使えば、社内の規程やマニュアルを「聞けば答える」状態にできます。鍵になるのは、ツールの操作そのものよりも、答えがそこにしかない一次資料を過不足なく揃えて、AIが読みやすい形に整え、更新と共有を運用に乗せることです。
NotebookLMは参照範囲を固定できるからこそ、答えがぶれては困る場面で力を発揮します。一方で、ノートブックの共有は中身を全部見せることと同じになる、という権限の挙動には十分注意してください。
ツールの操作や、Geminiと連携させた呼び出し方など、より具体的な使い方については連携記事で詳しく解説しています。本記事で「何を読ませ、どう運用するか」を押さえたら、あわせてご覧ください。



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