「自社の業務に合ったシステムを作りたいけれど、いくらかかるのか見当がつかない」。中小企業の業務システム開発の検討は、この費用の読めなさで止まってしまうことが少なくありません。
市販のソフトを入れても自社の受注の流れに合わず、結局Excelで二重に管理している。そんな悩みを抱えたまま、見積りを取る前にあきらめてしまう会社もあります。
先に答えをお伝えすると、業務システム開発の費用は「人月単価 × 工数(人数 × 月数)」で決まります。
業界団体のJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「ソフトウェア・メトリクス調査2025」では、総費用を工数で割った人月単価は約127万円でした。
単価は発注先ごとに違いますが、どの会社に頼んでも効くのは工数を減らすことで、その近道は作る範囲を一つの業務に絞ることです。開発の進め方ごとの費用の出方は、次のとおりです。
| 開発の進め方 | 費用の出方 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 市販のソフト・SaaS | 月額の利用料(人数や件数で変わる) | 業務の流れをソフトに合わせられる |
| ノーコードで社内で作る | ツールの利用料と、社内の作業時間 | 社内に設定を担える人がいる |
| スクラッチ開発(一から作る) | 人月単価 × 工数。範囲が広いほど高くなる | 独自の要件が多く、範囲も広い |
| 一つの業務に絞った開発 | 範囲を固定した総額、または初期費用+月額 | 特定の業務だけを自動化したい |
紹介する調査の数字と制度は、2026年9月時点の公式情報です。発注先の選び方そのものは、カスタムAIエージェントの発注先の選び方で詳しく扱っています。
見積りを頼む前に、自動化したい業務を一つに絞って書き出してみましょう。範囲が決まると工数が読みやすくなり、各社の見積りも同じ条件で比べられます。
- 業務システム開発の費用が決まる仕組みと、公的な調査の人月単価
- 開発の進め方ごとの費用の出方と、開発後にかかる費用
- AIで開発の作り方がどう変わり、費用のどこに効くか
- 予算内に収める進め方と、見積りが妥当かの見極め方
業務システム開発の費用が決まる仕組み
システム開発の見積りは、多くの場合「何人が何か月関わるか」から計算されます。仕組みを知っておくと、どこを減らせば費用が下がるかが見えてきます。
費用は人月単価と工数の掛け算
見積書にある「人月(にんげつ)」は、エンジニア1人が1か月働く作業量のことです。開発費は、次の掛け算で出すのが基本です。
開発費 = 人月単価 × 工数(担当する人数 × 開発期間の月数)
たとえばエンジニア3人が4か月関わると、工数は12人月です。次の節で紹介する調査のスクラッチ開発の平均単価96万円で計算すると、96万円 × 12人月 = 1,152万円になります。

このように、機能の数や成果物の量ではなく、何人が何か月関わるかで金額が決まるのが人月計算の特徴です。
この方式が長く使われてきたのは、着手する前に正確な作業量を読むのが難しかったためです。人が1行ずつコードを書いていた時代は、作業時間を物差しにするのが、発注する側と受ける側の双方にとって分かりやすい基準でした。
公的な調査で見る人月単価
JUASは、ユーザー企業を中心にシステム開発の実績を集めた「ソフトウェア・メトリクス調査2025」を2025年4月に公開しています。集まった366件のうち、外れ値などを除いた232件が分析の対象です。
| 開発の種類 | 人月単価(加重平均) | 10人月未満の案件 |
|---|---|---|
| スクラッチ開発 | 96万円 | 185万円 |
| パッケージを使った開発 | 144万円 | 63万円 |
| SaaSを使った開発 | 144万円(件数が少なく参考値) | ― |
| 全体(総費用と工数の関係から) | 127万円 | ― |
出典:JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」(図表2-8-1、2-9-1〜2-9-3)
回答はユーザー企業を中心としたもので、中小企業の小さな案件だけを集めた数字ではありません。単価は発注先や案件によって大きく変わるため、見積りを比べるときの物差しとして使ってください。
目を引くのは、10人月未満の小さなスクラッチ開発では単価が185万円と高く出ている点です。小さな案件でも一から作れば割安になるとは限らないため、工数を減らすだけでなく、作り方そのものを選ぶことが大切になります。
見積りが膨らむ予備費と周辺の作業
見積りを押し上げる要因は、もう一つあります。開発の途中で仕様の変更や追加の要望が出ると、大きな手直しが生じるため、開発会社はそのリスクを見越して見積りに予備費(バッファ)を上乗せします。
さらに、動くシステムを作る作業のほかにも、人件費がかかる工程があります。
- 要件を決めるための打ち合わせ
- 詳しい設計書の作成
- 納品・検収のための資料づくり
こうした費用が重なった結果、中小企業には「カスタム開発は高すぎて手が出ない」という印象が根づいてきました。
開発の進め方で変わる費用の出方
導入部の表で見たとおり、同じ業務でも作り方によって費用の出方が変わります。ここでは、市販のソフトで足りるかの見極めと、開発のあとにかかり続ける費用を確かめます。
市販のソフトで足りるかを先に確かめる
市販のSaaSやパッケージソフトは、初期費用を抑えられる点が大きな利点です。ただし、自社の業務の決まりごとを、ソフトの側に合わせる必要があります。
業務の流れに合わないソフトを無理に入れると、画面を見ながらExcelに手で入力する二重の管理が生まれます。毎月の利用料を払いながら手作業が減らない状態は、金額以上の損失です。
市販のソフトで足りる業務はソフトで済ませ、合わない業務だけを開発で補うのが、費用を抑える基本の考え方です。契約中のSaaSに無駄がないかは、次の記事の手順で見直せます。

開発後にかかり続ける費用
開発費とは別に、システムを動かし続けるための保守・運用の費用がかかります。主なものは次のとおりです。
- サーバーやクラウドの利用料
- 不具合の修正と、使い方の問い合わせへの対応
- OSや連携先のサービスが更新されたときの手直し
- AIを使う仕組みなら、使った量に応じたAIの利用料
保守費用の水準は、発注先や契約の内容によって大きく変わります。見積りの段階で月額か年額かを必ず出してもらい、初期費用と合わせた総額で比べることが大切です。
AIの利用料の見方は業務用途のLLM使用料金|API従量課金でチェックするポイントで、動き始めたあとの点検はAIエージェント導入後の運用と保守で紹介しています。
AIで変わった開発の作り方
ここ数年で、システムの作り方と、開発を請け負う事業者の顔ぶれが変わってきました。ただし、JUASの2025年の調査でも人月単価は約127万円で、公的な調査で単価そのものが下がったと示す数字は確認できていません。
変わったのは単価よりも、作り方によって工数を減らせる余地です。人月計算のまま見積りを出す開発会社では、作る速さが上がっても見積り金額に表れにくい点も押さえておきましょう。
実装にかかる時間が短くなった
AIがプログラムのコードを書いたり直したりするようになり、実装にかかる時間が短くなりました。試作を見せて意見をもらい、直すという往復を、短い間隔で回せるようになっています。
手戻りを早い段階で見つけられれば、開発会社が手戻りに備えて上乗せする予備費も小さくできます。少人数のチームで要件の整理から実装・検証までを受け持ち、伝達のための資料や会議を減らしている開発会社もあります。
短くなったのは、あくまで実装の時間です。業務の流れを聞き取る時間や、現場に使い方を根づかせる時間は、これまでどおり必要なので、開発全体の費用が同じ割合で下がるわけではありません。
AIで開発の進め方がどう変わるかは、次の記事で詳しく扱っています。

パッケージを改造せず外側に作る
これまでは、パッケージの一部を改造して使う形が主流でした。一から作るには、データベースも画面もすべて自前で用意する必要があったためです。
ただ、パッケージの改造には次のような代償がありました。
- 元の製品の仕様や構造に縛られる
- 製品が更新されるたびに、改造した部分の手直しが要る
- 改造に対応できる技術者が限られ、単価が高くなりやすい
つまり、初期の開発費を抑える代わりに、将来の保守費用を抱え込む形になっていました。
今は、ログインの仕組みや一覧画面のような基本の部品を、汎用の部品とAIで短い期間に組み立てられます。一つの業務に絞った小さな仕組みなら、パッケージ本体を改造するより、外側に独立して作るほうが安く済む場面も出てきています。
一つの業務を請け負う小さな事業者
費用の出方が変わってきた背景には、開発を請け負う側の変化もあります。製造業では、ロボット本体を作るのではなく、各工場の工程に合わせてロボットを組み上げ、稼働まで支える「ロボットSIer」が定着しています。
業界団体の日本ロボットシステムインテグレータ協会は、会員企業を探せる「ロボットSIer検索」を公開しています。大手に一括で頼む以外の選択肢がはっきりした例です。
事務や受注処理の自動化でも、AIを使った自動化を専門に請け負う小規模な事業者が出てきています。海外では「AI Automation Agency」などと呼ばれ、少人数で汎用の部品とAIを組み合わせて仕組みを作ります。
大手の開発会社に頼む選択肢は今も有効です。一方で「特定の業務だけを自動化したい」という目的なら、こうした小規模な事業者のほうが、早く、費用を抑えて導入できることがあります。
ただし、事業者ごとに技術力やサポートの体制には大きな差があります。後で紹介する見極めの観点で、契約前に確かめてください。
見積りの形と契約の種類
システム開発を依頼するときの費用は、見積りの形と契約の種類でも変わります。同じ金額でも、何に対して払うのかを確かめておきましょう。
価格の決め方は人月だけではない
今は、人月計算のほかにも、いくつかの価格の決め方があります。
| 価格の決め方 | 計算のイメージ | 向いている案件 |
|---|---|---|
| 人月契約 | 人月単価 × 人数 × 期間 | 規模が大きく、仕様が決まっていない |
| 一括の固定価格 | 開発の範囲を固定して総額を示す | 作りたい機能や仕様が固まっている |
| 機能・画面の単位 | 画面や機能の数 × 単価 | 機能の追加や削減を柔軟に決めたい |
| 初期費用+月額 | 開発費+月々の運用サポート費 | 初期の費用をできるだけ抑えたい |
| 処理件数の従量課金 | 基本料金+処理件数 × 単価 | 繁忙期と閑散期で量の差が大きい |
| 成果報酬 | 減らせた工数や費用に応じて払う | 削減の効果を数字で測れる |
特定の業務に絞った自動化なら、「初期費用+月額」か「機能単位の定額」が分かりやすい選択肢です。あとで機能を広げたときの追加費用も読みやすくなります。
成果報酬は魅力的に見えますが、何を成果とするかでもめやすい形です。選ぶときは、契約の前に双方で成果の数字の定義をそろえてください。
請負と準委任の違いを確かめる
業務システムの受託開発の契約は、大きく「請負」と「準委任」に分かれます。請負は完成したシステムに対して、準委任は作業そのものに対して報酬を払う契約です。
要件定義のように作るものがまだ決まっていない工程は準委任、作るものが固まった工程は請負、と工程ごとに使い分けることもあります。請負か準委任かで、不具合への責任や途中で解約したときの支払いの扱いが変わります。
IPA(情報処理推進機構)の「情報システム・モデル取引・契約書」第二版(2020年12月)は、改正民法に合わせて、請負と準委任の報酬の扱いなどを見直しています。
契約書のひな形として、発注前に一度目を通しておくと、見積りの前提を確かめやすくなります。
開発費を予算内に収める進め方
費用がふくらむ会社と、予算内に収める会社の違いは、単価よりも開発の進め方にあります。ここでは、工数を減らす四つの進め方と、補助金の確かめ方を紹介します。

最初から全自動を目指さない
例外の処理まで含めて最初から完全に自動化しようとすると、開発の費用がふくらみます。
日常的に起きる8割の定型の処理だけを自動化し、残り2割の例外は人が対応すると決めておきましょう。これだけで作る機能が大きく減り、費用を抑えられます。
小さく作って試してから広げる
まず小さく作って数か月運用し、効果を確かめてから機能を広げていきます。AIを使った開発では直しや追加の手間が下がっているため、最初の契約で最終形まで決め切る必要はありません。
期待した効果が出なかった場合も、その時点で小さな損失で止められます。最初に大きな金額を一度に投じる進め方と比べて、経営上のリスクを小さくできるのが利点です。
どの業務から始めるかの候補は、業務自動化でできること一覧で業種ごとに紹介しています。
既存システムとの連携と画面は後回しにする
システム同士のデータ連携(API連携やデータベースへの接続)は、増やすほど開発の難しさと費用が上がります。特に古い基幹システムと直接つなぐ作業は、それだけで見積りが大きく膨らむことがあります。
最初は無理に自動でつながず、CSVファイルの取り込みなどで受け渡しをして、自動化の効果を確かめることをおすすめします。効果が見えてから自動の連携を足しても遅くありません。
画面も同じで、操作画面を作り込むほど、そのまま費用が増えます。通知はふだん使っているメールやチャットで受け取り、開発するシステムには確認用のシンプルな一覧画面が一つあれば十分です。
入力を助ける機能や見た目の調整は、導入の効果を確かめてから考えれば間に合います。現場で使われるかどうかは、画面の作り込みとは別の問題です。
補助金の対象になるかを確かめる
国の補助金を使えば、導入の負担を減らせる場合があります。IT導入補助金は、2026年から「デジタル化・AI導入補助金」に名前が変わりました。
| 通常枠 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 業務プロセスが1〜3つ | 5万〜150万円 | 2分の1以内(最低賃金に近い事業者は3分の2以内) |
| 業務プロセスが4つ以上 | 150万〜450万円 | 同上 |
この補助金は、IT導入支援事業者が事前に登録したITツールの導入が前提です。一から作る開発が対象になるかは、公募要領で必ず確かめてください。公募の回ごとに締め切りと条件が変わる点にも気をつけましょう。
見積りが妥当かを見極める
安ければよいわけではなく、高いから安心とも限らないのがシステム開発の見積りです。システム開発費用の妥当性は、金額そのものより、金額の理由と効果の測り方で判断します。
安さの理由を説明できるか?
ほかの会社より明らかに安い見積りが出てきたら、なぜこの金額でできるのかを必ず聞いてください。信頼できる開発会社なら、次のような具体的な理由が返ってきます。
- 自社で持っている共通の部品を使う
- 1〜2名の少人数で、伝達や会議の手間を減らしている
- 対象を一つの業務に絞っている
理由があいまいなまま金額だけが安い場合は、テストや導入後の定着の支援が抜けていることがあります。あとから追加の請求でもめるもとになるため、見積りの範囲を確かめましょう。
投資対効果を数字で確かめる
導入によってどれだけの時間と人件費が減ったかを、あとから数字で確かめられる仕組みになっているかを確認してください。数字で効果を追えなければ、範囲を広げるかどうかの判断ができません。
当社では導入後に、削減できた時間や処理件数を画面で確かめられるようにしています。費用対効果は、次の計算で見積もれます。
| 項目 | 計算 | 例 |
|---|---|---|
| 月の削減額 | 削減できた時間 × 1時間あたりの人件費 | 40時間 × 2,500円 = 月10万円(年120万円) |
| 回収期間 | 導入費用 ÷ 月の削減額 | 100万円 ÷ 10万円 = 約10か月 |
月々の保守費用やAIの利用料がかかる場合は、月の削減額からその分を差し引いてから回収期間を計算します。差し引く前の数字で比べると、回収を早く見積もりすぎてしまいます。
こうした計算を、根拠を示しながら一緒に出してくれるかどうかが、安心して任せられる開発会社を見分ける目安になります。
見積りを受け取ったら、月の削減額と、毎月かかる費用を並べて回収期間を出してみましょう。数字にすると、どの会社の提案が自社に合うかが見えてきます。
契約前に確かめること
金額が妥当だと分かったら、最後は契約の条件を確かめます。事前に確かめておきたいのは、次の点です。
- 見積りに含まれる作業の範囲
- 工数の数え方
- 保守の期間での、不具合の修正と機能の追加の境目
- 現地への訪問に対応してもらえるか
- 作ったシステムの著作権・所有権がどちらにあるか
それぞれの確かめ方は、次の記事にまとめています。

まとめ
- 業務システム開発の費用は「人月単価 × 工数」で決まり、JUASの2025年の調査では人月単価は約127万円
- 単価より工数を減らすほうが効くため、作る範囲を一つの業務に絞り、連携と画面は後回しにする
- 見積りは、保守・利用料を含めた総額と、回収期間の計算で比べる
業務システム開発の費用は、作る範囲と作り方で大きく変わります。公的な調査の単価を物差しに見積りを読み、一つの業務から小さく始めれば、予算内に収めながら効果を確かめられます。
まずは、毎週くり返している作業を一つ選び、月に何時間かかっているかを書き出すところから始めてみてください。その数字が、見積りを比べるときの基準になります。
当社では、一つの業務に絞った自動化を、訪問から運用が定着するまでお手伝いしています。どの業務から始めるかを一緒に整理したい段階でも、お気軽にご相談ください。
愛知・岐阜・三重の製造業の業務を、無料でAI診断します
担当者が御社へお伺いし、業務の流れを見させていただいたうえでヒアリングを行います。業務ごとの自動化案と想定される効果を、A4一枚にまとめてお渡しします。
対象エリア:愛知・岐阜・三重
診断レポートで分かること
- 業務ごとの削減時間と、人件費に換算した効果
- 人件費以外の効果(属人化の解消、納期回答の早さなど)
- 自動化しないほうがよい業務
- どの業務から始めるかの進め方
ご用意いただくもの
- 普段お使いの書類の見本(注文書・見積書・Excelなど)
- 業務のご担当者の同席(30分程度でも構いません)
社外に出せない書類は、その場で拝見するだけで持ち帰りません。


