Excelで在庫管理をしている会社が最初につまずくこと3選|無料ツールから本格システムまで

「在庫管理はExcelで十分」と思っていたのに、気づいたら手に負えなくなっていた——そんな声を中小企業の経営者や事務担当者からよくいただきます。

Excelは非常に優秀なソフトですが、在庫管理という用途においては、会社の規模や商品数が増えるにつれて「想定外のつまずき」が起きやすくなります。

この記事では、Excelで在庫管理をしている会社がよく陥る3つの問題と、それぞれの現実的な解決策を整理してご紹介します。無料で使えるツールから有料の専門システムまで幅広く触れますので、自社の状況に合わせて参考にしてください。


目次

Excelで在庫管理をする場合の構成

まず、多くの中小企業がどのようにExcelで在庫管理をしているかを確認しておきましょう。

一般的にはシートを複数に分けて運用しています。

在庫マスタシートに商品コード・商品名・単価・現在庫数を一覧で管理し、別のシートに入庫・出庫の記録をつけていくスタイルです。集計にはSUMIF関数(商品ごとの入出庫合計)やVLOOKUP関数(商品コードから商品名を引っ張る)などがよく使われています。

  • 在庫マスタシート:商品コード・商品名・単価・現在庫数を一覧で管理
  • 入庫記録シート:仕入れた日付・商品・数量を記録
  • 出庫記録シート:出荷した日付・商品・数量を記録
  • 在庫集計シート:入庫数-出庫数で現在庫を自動計算

このやり方は、商品点数が少なく・担当者が1人で・更新頻度も低い場合であれば、十分機能します。問題は、事業が成長したり、関わる人が増えたりしたときに起きてきます。

在庫管理のよくあるつまずき3選

Excelで在庫管理する時によくあるつまずきを、3選を見ていきましょう。


つまずき① 複数人で使おうとすると壊れる

在庫管理Excelで最初にぶつかる壁が、複数人での同時利用です。

デスクトップ版のExcelは基本的に「1人が開いて編集する」設計になっています。別の人が同じファイルを開こうとすると「読み取り専用で開きますか?」という表示が出て、編集できない状態になります。無理に両方で編集すると、保存のタイミングによってどちらかの変更が上書きされてしまいます。

これを避けようとして、倉庫担当・営業・事務がそれぞれ別のコピーファイルを持つようになるのがよくあるパターンです。気づいたときには「どのファイルが最新かわからない」という状況になっています。

解決策:「クラウドで共有する」
Excel for the WebまたはGoogleスプレッドシートに移行することで、複数人がリアルタイムで同時編集できるようになります。詳しくは後述の「同時編集ツールの比較」をご覧ください。


つまずき② リアルタイムで在庫がわからない

2つ目のつまずきは、「今この商品が何個あるか」をリアルタイムで把握できないことです。

Excelは、誰かが開いて手入力して保存して初めてデータが更新されます。倉庫で出庫が起きても、担当者がExcelを開いて記録するまでの間は、古い数字のままです。

営業が電話で「この商品、すぐ出せますか?」と聞かれたとき、Excelを開いてみたら最終更新が昨日で、その後の出庫が反映されていない——というケースが典型的なトラブルです。在庫があると思って受注したら実際には欠品していた、ということも起きます。

解決策:「手入力をやめる」
バーコードやRFIDで入出庫を自動記録する仕組みにすることで、タイムラグとミスが大幅に減ります。詳しくは後述の「読み取り技術の比較」をご覧ください。


つまずき③ 数式が壊れても気づかない

3つ目が、最も気づきにくいつまずきです。

Excelは誰でも自由にセルを編集できます。これは便利な反面、うっかり数式の入ったセルに値を上書きしてしまっても、見た目上はしばらく正常に見えるという問題があります。

「先月から在庫数が合わない気がするけど、なぜかわからない」という状況になったとき、原因を探ってみると数週間前に誰かが数式を消していた——というのは在庫管理Excelではよくある話です。

さらに怖いのは、「その数式を作った担当者が退職した場合」です。修正しようにも、誰もその数式の意図がわからず、ファイルごとゼロから作り直すことになります。

解決策は「数式に触れなくていい仕組みにする」
専用の在庫管理システムであれば、担当者が触るのは入出庫の入力画面だけで、計算処理はシステム側がやってくれます。数式を誰かが壊す心配がありません。


同時編集ツールの比較|Excel for the Web vs Googleスプレッドシート

つまずき①の解決策として「クラウドで共有する」方法を選んだ場合、主な選択肢は2つです。

Excel for the Web(オンライン版Excel)

OneDriveやSharePointにExcelファイルを置いてブラウザから開く方法です。デスクトップ版と見た目がほぼ同じなので、これまでの操作感をそのまま維持できます。誰かが編集しているセルがハイライト表示され、変更履歴も自動で保存されます。

注意点が2つあります。まず、デスクトップ版のマクロ・VBAはオンライン版では動きません。在庫管理Excelがマクロで自動化されている場合、そのまま移行すると動かなくなる可能性があります。次に、Microsoft 365のサブスクリプションが必要です(法人向けは月額899円/ユーザー〜)。すでに社内で使っている場合は追加費用なしで利用できます。

Googleスプレッドシート

Googleアカウントがあれば無料で使えます。同時編集はExcel for the Webより歴史が長く動作が安定しており、誰がどのセルを編集しているかがリアルタイムで色分け表示されます。「誰が・いつ・何を変えたか」の履歴も確認できます。

既存のExcelファイルをそのままアップロードして使い始めることができますが、複雑な数式やマクロは一部動作が異なる場合があります。

どちらを選ぶか

比較項目Excel for the WebGoogleスプレッドシート
費用Microsoft 365が必要(月額899円〜/人)無料
同時編集
変更履歴
マクロ・VBA✗(Apps Scriptで代替可)
Excelとの互換性○(複雑な数式は一部異なる)
スマホ操作
向いているケースMicrosoft環境を統一したいコストを抑えたい・Googleに慣れている

どちらを選んでも機能の差はほとんどありません。決め手は「すでにMicrosoft 365を使っているか」「コストを抑えたいか」の2点です。

ただし繰り返しになりますが、どちらを選んでも「手入力が前提」であるという点は変わりません。同時編集問題は解決できますが、入力のタイムラグやミスの問題は別途対処が必要となります。


読み取り技術の比較|バーコード・QRコード・RFIDなど

つまずき②の解決策として「手入力をやめる」方法を選んだ場合、読み取り技術にはいくつかの選択肢があります。

バーコード・QRコード

最も導入しやすい方法です。商品に貼ってあるバーコード(JANコードなど)をスマホのカメラでスキャンすると、商品名・数量が自動でシステムに記録されます。専用のハンディターミナルがなくてもスマホ1台で始められるため、初期コストがほぼかかりません。

向いているケース: 商品点数が少ない・入出庫の頻度が低い・まずはお試しで始めたい

限界: 1点ずつスキャンする必要があるため、大量の商品を一度に処理するには時間がかかります。

無料または低コストで使えるツール:

  • Googleスプレッドシート+無料テンプレート
    JANコードと品名を登録するだけで、スマホでバーコードを読み取って入出庫を記録できるテンプレートが公開されています。費用ゼロで仕組みを体験できます。
  • zaico(ザイコ)
    無料プランで最大200件の在庫登録とバーコード読み取りに対応。月数百円からの有料プランではアラート通知・複数人管理・freee連携が使えます。
  • SASO
    無料のオープンソースソフト。バーコードでの数量・棚番管理とラベル印刷機能あり。ただしデータベースの構築が必要なため、IT知識がある担当者がいる会社向けです。

RFID(ICタグ)

RFIDは「Radio Frequency Identification」の略で、電波を使って商品情報を非接触で読み取る技術です。バーコードの進化版と考えるとわかりやすいです。

バーコードとの最大の違いは「複数点を一括で読み取れる」点です。棚の前にリーダーをかざすだけで、棚全体の在庫を一括で読み取れます。棚卸しが「3時間から15分に短縮した」という事例もあります。

比較項目バーコード・QRコードRFID
読み取り方式1点ずつスキャン複数点を一括・非接触
読み取り距離数cm〜数十cm数cm〜数m(種類による)
導入コスト低い(スマホで代用可)高い(専用リーダー・タグが必要)
タグ単価ほぼ0円(印刷で作れる)1枚数十円〜数百円
棚卸しの速さ1点ずつ(低速)一括読み取り(高速)
向いている規模小〜中規模中〜大規模・在庫点数が多い現場

RFIDはすべての会社に必要か?

商品点数が数百点以下・月1回の棚卸しで済んでいる規模であれば、バーコード管理で十分なケースがほとんどです。RFIDはタグ代・リーダー代・導入設定費用を合わせると初期投資が数十万円〜になることも多く、小規模な在庫では費用対効果が合わない場合があります。

まずバーコードから始めて、棚卸しに人手がかかりすぎてきたタイミングでRFIDへのステップアップを検討するのが現実的な順番です。


IoT重量センサ(番外編)

近年、ユニークな方法として「重量センサで在庫を自動管理する」仕組みが中小企業にも普及しています。「スマートマット」が代表的なサービスです。管理したい商品をマットの上に置くだけで重量が計測され、在庫量がリアルタイムでクラウドに反映されます。在庫が設定した量を下回ると自動で発注通知が届く仕組みも作れます。

バーコードのようなスキャン操作が一切不要なため、現場スタッフの操作を最小限にできます。ただし「重さで管理できる商品」に限られるため、業種・商品の形状によって向き不向きがあります。消耗品・液体・粉末・部品などの在庫管理に特に向いています。


ツール・手段の使い分け早見表

次の表は状況・課題別のツールの使い分けを示しています。参考にしてください。

状況・課題おすすめの手段費用感
担当者1人・商品数少ないデスクトップExcel(現状維持)無料
複数人で使いたい・コスト抑えたいGoogleスプレッドシート無料
複数人・Microsoft環境に統一したいExcel for the Web(OneDrive)月899円〜/人
バーコードをまず試したいGoogleスプレッドシート+無料テンプレート無料
商品数が増えた・アラート通知がほしいzaico有料・Zoho Inventory月数百円〜
スキャン操作をなくしたい(消耗品など)IoT重量センサ(スマートマットなど)要問い合わせ
棚卸しに人手がかかりすぎているRFID対応の在庫管理システム数十万円〜
発注・請求とも連携させたい有料の在庫管理SaaS月1万円前後〜

無料ツールの制限

無料プランは登録できる商品点数が200件前後・利用できるユーザー数に制限があることがほとんどです。事業が成長するにつれて制限に引っかかり、結局有料プランへの切り替えが必要になるケースは少なくありません。また無料プランではサポートを受けられない場合が多く、トラブルの際は自力で解決する必要があります。「まず無料で試して、物足りなくなったら有料へ」というステップアップの考え方がおすすめです。


在庫管理SaaSでも解決できない場合

在庫管理の専門SaaSは多機能で便利ですが、すべての会社の業務フローにぴったりはまるわけではありません。

「受注したタイミングで引当処理をしたい」「倉庫が複数あって拠点間の移動を細かく管理したい」「既存の販売管理ソフトと在庫データを自動連携させたい」といったご要望は、既製のSaaSでは対応しきれないことがあります。

こうした「既製品の届かない部分」を補う方法として、オーダーメイドの業務システム開発があります。当社では既存のシステムはそのままに、足りない機能だけを追加で開発するという形での対応も行っています。在庫管理の仕組みで「どこまでSaaSで対応できて、どこからオーダーメイドが必要か」に悩まれている場合は、お気軽にご相談ください。


まとめ

Excelで在庫管理をしている会社がつまずきやすいのは、①複数人での同時利用、②リアルタイムで在庫が見えない、③数式が壊れても気づかない——の3点です。

①はExcel for the WebまたはGoogleスプレッドシートへの移行で解決できます。コストを抑えたいならGoogleスプレッドシート(無料)、Microsoft環境に統一したいならExcel for the Webが向いています。

②はバーコード読み取りから始めるのが現実的です。まずzaicoの無料プランかGoogleスプレッドシートのテンプレートで試して、棚卸しの手間がどうしても減らない場合にRFIDへのステップアップを検討する順番がおすすめです。スキャン操作をゼロにしたい消耗品管理にはIoT重量センサという選択肢もあります。

③は専用システムを使って「数式に触れなくていい仕組み」を作ることが根本的な解決になります。

まずは無料のツールから試してみて、自社の規模と業務の複雑さに合わせてステップアップしていくのが、コストを抑えながら在庫管理を改善していく現実的な方法です。

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この記事を書いた人

1981年生まれ、名古屋出身。
2008年より17年間ドイツ・ベルリンに在住。
ドイツの職業訓練プログラムを修了後、複数のIT企業でフルスタックエンジニアとして経験を積む。2022年よりドイツの大手システム開発会社で、リードエンジニアとして勤務する。小売・医療・メディアなど異なる業種に携わる。2026年6月株式会社Neurosynchを設立。2027年、日本に帰国予定。
著書「AI時代の海外移住戦略

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